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体育祭4

親に泊まりの件を話すと、自分も夜勤だから構わないと許可はあっさりと出た。 真悠は毎朝俺の家のまで迎えにきた。 そして、ついこの前は真悠が外に待っていたのを母に知られて、母と真悠は初対面していた。どうなるかと思ったが、真悠は人当たりの良さが出て、母はすっかり真悠を気に入ってしまった。今度泊まりに行くのも彼の家だと言うと、母はより一層喜んで行ってきなさいと言った。 真悠はいつも必ず迎えに来て、玄関の前で待っている。 そういえば、いつ俺の家を教えたか、全く思い出せていない。 ただ当たり前のように彼は家の前にいる。俺がどんなに早起きしても寝坊をしても、ドアを開ければ彼はいた。ベストタイミングだと言わんばかりに彼は笑ってこちらを見る。 約束をしていたわけでもないから、時間が違くてすまないと謝るべきかわからない。そもそも待ち合わせの時間すら決めた記憶はない。ただ彼がいるから、一緒に登校せざるを得ないのだ。だから、決まりごとのように彼と一緒に学校へ向かう。それが充希には違和感でしかなかった。 こんなこと誰に話せばいいかわからない。そもそも遼ぐらいしか友達と呼べる人間はいない。そんな遼に真悠と付き合っていることや、このような話をしても何になるというんだろう。もしかしたら、彼に軽蔑されてしまうかもしれないし、俺だけじゃなく真悠だって今後部活でやっていくには辛くなるかもしれない。そう思うとそんな簡単には人に話せないと充希は思った。 真悠と充希は明日で付き合って14日を迎える。 明日はいよいよ真悠の家に泊まる日だ。この14日間は友達であった2人となんら変わらぬように見えてたくさんのことが変わっていった。 充希主義になっていく真悠。飲み物を買う時だって階段を降りるときだってドアを開けて中に入る順番だって、真悠は充希を1番に優先した。時間に遅れたって決して怒らない。毎朝ドアを開ければ制服が一切乱れぬ真悠がおはようと最上級の笑みを見せる。その真悠に充希は異様な感覚と謎の執着のようなものを感じた。 充希は自分には手に負えない事態になっていることをこの時、無意識に気づいていたのかもしれなかった。

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