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体育祭6~お家デート~

真悠の家は一言でいうととても大きく立派だった。 二階建ての一軒家はここらでも一番大きく、綺麗な庭や豪勢な門に充希はただただ圧倒された。 「充希、どうぞ」 真悠はそう言ってたくさんの花々が咲いた庭を通り抜け、家の大きな扉を開けた。木や庭の草花は綺麗に管理されている。こんな膨大な量の花々と敷地に一人で住んでいるのか。 「真悠って何者・・・」 「高校生だよ」 そういうことじゃないと充希は思いながら家に足を踏み入れた。 白を基調としたシンプルかつ精錬されたリビングはまるでモデルルームのようだった。人がいる気配が全くない、生活感のない家だ。 真悠は好きなとこに座ってとオープンキッチンのほうへ向かった。 大きな窓からは太陽の光が気持ちよく入っている。二階は吹き抜けになっていて上を見上げれば部屋の扉のようなものが見えた。充希は初めてこんな大きい家に入ってどうしたらいいかわからずリビングの真ん中で立ち尽くしてしまう。 「充希。ソファにでも座ってたらいいのに」 真悠がいつの間にかキッチンから戻ってきていた。トレイを持った真悠はソファのところまで行きソファの前にあるテーブルにコップやおしゃれな外国のお菓子を並べた。 充希もそのまま真悠についていく。 「真悠・・・何か手伝うよ」 「ううん、充希はお客様だからゆっくりしてて」 にっこり綺麗な笑顔を見せられる。じっと真悠を見ていたが、「俺がもてなしたいんだ」と言われてしまえばそれまでで、充希は分かったとおとなしくソファに座った。 ぼうっと窓の外の景色を眺めて暇をつぶしていると真悠が再度キッチンから戻ってきた。テーブルに赤い液体の入ったティーポットが置かれる。 「充希、コーヒー苦手だよね。ハーブティーなら大丈夫?」 「あ、うん」 返事を聞いた真悠はよかったと安堵すると、テキパキお茶の準備を始めた。それをただ見つめるだけの充希。次第に恥ずかしさというか申し訳なさを感じてくる。 「やっぱり手伝うよ、真悠」 「だめ、俺にやらせて。それとも俺が作ったハーブティーやだ?」 そうじゃないけどと慌てて弁解すれば、それならいいねと真悠はまたにこりと笑ってお茶の用意をした。真悠は引かないところは引かない。最近になって、真悠のそういうところを知った。すべてを優しく享受するのかと思いきや、自分の意見や意思を曲げない。それどころかうまく充希の足をすくって無理やり押し通そうとしてくるところがある。告白の件もそうだ。 充希は口達者ではないからあっという間に真悠に言いくるめられてしまう。 できたハーブティーを真悠は充希に手渡した。熱すぎず、ぬるすぎずちょうどいい温度だ。 ぜひ飲んでと真悠に急かされる。充希は真悠を横目に見ながらカップに口をつけた。 おいしい。苦みはなく、さわやかな酸味がハーブティーのおいしさを引き立てる。 おいしいと呟いた充希に真悠はよかったと満足すると、やっと彼は自分のカップに口をつけた。 それからも真悠は世話したがりなのか、なくなったカップにハーブティーを注いだり、菓子を並べて充希にたくさん提供くる。充希が口をつけてからではないからと真悠はハーブティーも口元に運ばない。バラエティー豊富なお菓子は真悠は一切手はつけず、すべて充希の前に差し出された。真悠の充希至上主義は学校ではない場所でも発揮された。 「真悠、そんなに俺に気遣わなくていいよ。真悠の好きにしていいからね」 「?俺は好きなようにしてるよ?充希は俺の1番だから、1番にいろんなことをしてあげたいんだ」 真悠はそういうと空になったティーポットをもっておかわりはいるかと尋ねてきた。 俺はもうおなかいっぱいだからと断った。

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