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体育祭7~お家デート~
それから真悠とはテレビゲームなどをして時間を過ごした。
真悠は操作がうまいからサクサクゲームの進行は進む。ちょくちょくコントローラーを交換しながらプレイしていき、エンディングまで見事終わった。
一日でゲームを終わらせるなんて初めてだ。小さいころは何度か友達の家でゲームしたことはあったがこんながっつりプレイしたのは久々だった。
「充希そろそろ晩御飯にしようか」
「あ、うん。どうする?ピザとかでも頼む?」
真悠はコントローラをテーブルに置いてキッチンへ向かう。
「大丈夫、今から作るよ。何がいい?お肉と野菜はある程度あるんだけど」
ガサゴソと冷蔵庫をあさっている音がする。充希もあわててキッチンのほうへ向かった。
「そんな!いいよ、大変でしょ」
「ううん。充希に食べてもらえるなら俺嬉しいよ。ああ、ちょうどできそうなのはハンバーグかなぁ」
ひき肉や野菜をキッチン側にあるテーブルに出して真悠は呟く。
「充希はハンバーグ好き?」と機嫌よく真悠は問うた。
充希は、今度こそは俺も手伝うよと口を開こうとしたが、タイミングよく可愛い効果音が流れてきて「お風呂が沸きました」と機械音声が部屋に響く。
「あ、お風呂ちょうど沸いたみたい。冷めちゃうから、充希先に入ってきて?」
いつの間に…。すべて用意周到になされている事態に充希は反論する気もそがれてしまった。
わかったと充希はリビングに置いたバッグから下着と寝間着を取り出す。
荷物を持った充希を確認して真悠は風呂場へ案内した。
「ここがお風呂。タオルはここにあるから好きなように使って。洗濯物はこっち」
そういって真悠は籠を取り出す。充希は明日家に持って帰るからいいといって洗濯はさすがに断った。
晩御飯の準備をしてくると真悠は脱衣所を後にする。
充希は緊張気味に服を脱いでお風呂場へと入っていった。
真悠の家はお風呂も広い。綺麗なタイルにカビは一つもない。
真悠はどんな暮らしをしているのか充希は不思議で不思議でたまらなかった。
シャワーの口をひねって湯を浴びる。髪や体を順番に洗っていき、綺麗に洗い流すと、大きな浴槽へ充希は足を入れた。たっぷりの湯に充希は肩まで浸かる。他人の家のお風呂は緊張したが次第に慣れてきて心が休まる。ふぅと気の抜けた息を吐いた。
その瞬間がらりとお風呂場の戸が開いた。充希は思わずびっくりして湯の中ではねる。
もちろん開けたのは真悠だ。湯煙でよく見えていなかったが、風呂場に入ってきた真悠は全身裸だった。充希はよりびっくりする。
「え、ま、真悠っ?!」
「あれ?充希もうお風呂入っちゃったの?体は洗った?はやいなぁ、せっかく背中流そうと思ったのに」
そういって、シャワーの前の椅子に座り込む。綺麗についたしなやかな筋肉が目の前に来て、髪をやんわり下ろした真悠と目があう。
「真悠なんで」
「ご飯はちゃんと作ってあるよ。ハンバーグはできたてがいいと思って、後で焼くね」
「そうじゃなくてなんでお風呂一緒…」
「え?だめ?」
真悠のだめ?という言葉に充希は大変弱かった。だめかと聞かれるとだめではない。でも、おかしいような気もする。そんなもやもやを抱えている間に真悠は体を洗い始める。
充希は慌てて風呂場から出ていこうと浴槽から出ようとした。
「充希さっきお湯浸かったばっかでしょ?ちゃんとあったまってから上がらないと風邪ひくよ」
なぜお湯につかったタイミングがばれているのかと充希は思ったが、脱衣所にいたら気づくのも当たり前だった。そのまま、真悠は丁寧に体にボディソープを滑らせシャワーの湯で洗い流した。
充希は仕方なくあったまるまで湯につかる。真悠が浴槽に入るタイミングで上がろう。そう思って顔ギリギリまでお湯に浸る。
真悠は綺麗な茶の髪をさらさらと洗う。お湯で流して水気の吸った髪を真悠は片手でまとめあげて充希の方を見た。
普段とは違うしっとりとした真悠に色気を充希は感じる。真悠のかっこよさに充希は再び自覚した。
「充希ちょっと横ずれてもらってもいい?」
「あ、いいよ、俺あがるし」
「だめ。充希一緒に入ろう?」
今度のだめは疑問形ではなかった。立ち上がろうとする充希を抑えて真悠は隣に浴槽へ入る。入る瞬間に見た腹筋や股間に大人な部分を感じて、充希は無意識に自分の腹に手を当てた。
浴槽は高校生男子二人が入るとさすがにきつい。言わずもがな真悠と充希の肌はくっついてしまう。
「やっぱり狭いね」
「真悠、俺やっぱりあがるよ」
「充希」
真悠が不意に名前をまた呼んだ。なんだと真悠のほうを見ると真悠は長い足を充希のほうへ伸ばした。真悠の足に挟まれる形になる。
「充希こっちおいで」
真悠は軽く手をあげて充希の両腕を引っ張った。
「わっ!」
充希はそのままバランスを崩して真悠の胸の中に倒れてしまう。大きい水音を立てて、ひたりと真悠の胸筋と充希の頬が触れあう。充希は急いで赤くなった顔を真悠の体から離した。その隙に真悠はとんでもない器用さで充希の体を反転させ抱きかかえこんでしまう。真悠の足の間にすぽりとはまった充希は、背中から真悠の熱を感じた。ぴたりと後ろから抱きしめられる。さすがに充希はそこで抵抗した。
「真悠なにやってんのっ」
「なにが?」
肩から真悠は顔を覗かせてくる。いつも以上の至近距離にある真悠の顔に充希はびっくりしてしまう。しかし逃げ出そうと思っても真悠の体はぴったりとひっついたままだ。
「真悠っ」
「充希のぼせた?顔が赤いね」
そういって腹に回していた右手を顎に当てられる。真悠と目が合ってしまうように顔の角度を動かされ固定されてしまう。指一本分の距離に充希は心臓が勝手にドキドキとなった。大きく動く心臓にどぎまぎと真悠を見つめていると、真悠は嬉しそうに目を細めた。
「充希かわいい…」
そのまま唇に湿った感覚が落ちる。柔らかいけど熱くてすこし濡れた感覚。
その一瞬で、真悠の顔が遠ざかった。綺麗な真悠の唇が弧を描く。
(え?)
充希は初めてのその感覚に戸惑った。
もしかして、今真悠とキスした?
呆然と充希がしていると真悠は顎に置いた手を首に滑らす。長い指の腹が鎖骨をなぞりあげた。。優しいが、鎖骨の浮き出た部分をじっとりと撫でる手つきは充希を追い詰めようとしている。充希はその感覚にびくりと反射的に体を揺らした。その途端、触れていた真悠の手がピクリと跳ねる。
すると、真悠は手をゆっくりと充希の首元から離した。
「制御きかなくなっちゃいそうだから今はここでおしまいね」
そういった真悠は優しく充希の体を支えると、浴槽から立ち上がった。そのまま、脱衣所へと出て行ってしまう。
充希はまだ湯につかまったままで、ぼんやりと熱に浮いた頭で真悠の後ろ姿を眺めていた。無意識に唇へ手を持っていく。自分の指で押したものとは違う感覚。充希はいまだに状況の理解が出来なかった。
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