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体育祭11~お家デート~
あのあと、心身共に疲れてしまった充希は真悠と同じベットで寝た。充希がソファで寝ることは真悠にとって許せなかったようで結局一緒に布団へ入った。寝る時に体温があるというのは恥ずかしいことだと思ったが、それよりも安心感の方が大きいことを充希は初めて知った。
一応警戒していた真悠はあれから充希に一切手を出してはこず、朝を迎えると真悠は一人すでにキッチンで朝食を用意していた。
綺麗に焼かれたトーストと、野菜とベーコン目玉焼きの乗った皿が出てくる。
真悠は昨日と変わらず、充希を優先して飲み物や食べ物を勧めてきたり充希の行動を待った。充希はそれに対して仕方ないのだと思った。不可解であった充希を優先していた行動や言動も、昨日告げられた『充希が1番だから』という言葉一つで片付いてしまう。彼の中で充希が1番でことがまわり、それで良いと納得している。
充希が好き勝手なことを言っても真悠は充希を1番に優先するし許すだろうし実行するだろう。充希はそう開き直れればよかったが、でもそれを言ってしまうほどの責任や度胸はないと思った。真悠の求めている答えを充希は返せないからだ。
恋人という関係性も未だに充希はよくわからなかった。真悠を好き、かどうかもよくわかっていない。本当にこれでいいのか、別れた方がいいのではないか、充希はそんな考えが頭をよぎりながらパンをかじった。
時間になり、荷物をまとめ帰宅する。
充希は断ったが、真悠が送り届けたいとしぶり、結局送ってもらうことになった。
帰りは行きと同様手を繋がされた。
今の充希は本気で嫌がれば真悠は手を離してくれることは容易に想像できたが、それほど拒否する労力も理由も生まれなかったため大人しく従った。
家まであと数十メートルの近さになった。真悠がふと口を開いた。
「そういえば充希、あげたネックレスしてなかったね」
充希は心臓が冷えた。あと何歩で家に着くんだろう。それくらい家までの距離は短い。なぜ、いま真悠はそんなこと言ってくるんだ。あともうちょっとなのに。
「無くしちゃダメだから、家においてきちゃってた」
充希はこの状況に慣れてしまったのか、今までで1番最もらしい嘘が言えた。ごめんねと嘘の苦笑いまでして真悠の顔を伺う。
真悠はそっかと普段と変わらない綺麗な笑顔を見せた。
「でも無くしても代わりはいくらでも買ってあげるから、大丈夫。充希がそれをつけてくれていることに『1番』意味があるからさ」
だから、毎日つけてね。
家の前に着いた。真悠は手をゆっくり離す。
それじゃあまた月曜日ね。真悠は手を振る。充希も真悠に応対するように手を振りながら、玄関へ入っていく。扉をガチャンと閉めた。
充希は家に閉じこもった途端、扉に寄り掛かった状態で崩れ落ちた。
(重い……)
体もだるくて動かない。
充希は浅く息を吸いながら、そういえば真悠に別れようというのを忘れていたと思った。
でも今は立ち上がる力もなくてただただしんどいとうずくまった。
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