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0.5章 数年後の話 *

「ぁぁっん!待って!仕込みしなきゃだから、明日はいつもより朝早いんだよ?」 「そんなの知ってる!」 「それなら、抜いてよ、ひぁんっ!2回目はしないって言ったのにぃ!」 「後で怒られるからっ」  乱暴に閉められたカーテンの隙間から、薄っすらと満月が輝いていた。    真っ白なシーツを掴む小さな拳に、ありったけの力がこもる。背後で膝をつき目の前の華奢な腰を掴んだ男は思うままに腰を突き上げた。 「ひゃぁ!」  力の抜けた胸がマットレスに倒れこみ、肩と頬に重心が移る。  小刻みに突き上げてくる振動のせいで、腰を落とすことができないまま少年は快感に耐えていた。 「桃、締めすぎだ!」 「だってぇ、んぁ! そこやだぁ!」 「ここがいいとこなんじゃなかったか?」 「でもそんなにしたら出ちゃうもん!やぁだ!やめてって言ったのにぃ!」  嫌だと言う唇とは反対に、色白の少年の身体は悦んでいた。掴んで離さない。そんな反応だ。気持ちよすぎて、頭がおかしくなってしまいそうで、涙で頬が濡れた。 「桃ッ、中に出すぞっ」 「んっ、オニさん、好きッ。いっぱいちょうだいっ、ぁん、あっやん———ひゃぁ、ぁぁっん!」  熱い飛沫が爆ぜる。   桃はその感覚が一番好きだった。    体の中の奥の奥に、大切な人の一部を受け取れる。  この上ないほど、極上の愛の告白ではないか。  大事に取っておけたら最高なのだが…… 「おい、かき出さないと腹を壊すぞ」 「んー……もぉねむい……オニさんがやっといて?」 「はぁ、可愛い顔してこき使うな」 「洗濯は明日でいいから」 「スイッチを押すぐらい俺だってできる」 「う、むにゃむにゃ」  一瞬にして眠ってしまった恋人を見つめオニと呼ばれた青年はため息をついた。大体いつもこんな展開だ。歯止めが利かなくなり、桃が寝落ちするまで情事に励んでしまう。  今は恋人と呼べる仲だがその出会いは不思議なものだった。  このように体を絡めて愛を呟くようになったのはそれからずっと後の話だ。

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