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後日談 未来の話

「いらっしゃいませ」  新作のピーチキャラメルケーキをショーケースに飾った桃は、とびっきりの笑顔で挨拶をした。  旬の桃を砂糖で煮詰め、バーントカラメルで絶妙な苦さを醸し出したこのケーキは、開店してから一番の自信作である。いつもより多めに入れたバターが贅沢な舌触りを実現している。 「桃ちゃん、いつものと、新作のを1切れもらえるかしら?」  常連客の女性が買い物かごをカウンターに置いてほほ笑んだ。 「1切れでいいの?」 「ふふ、私を太らせたいの?」 「おやつ用と夕飯後用に2切れってのはどう?」 「そこまで言うならそうするわ」  桃とオニのケーキ屋は今日も繁盛している。行くだけで幸せになれる店だと誰も口を揃えて言う。隣町からも、そのまた隣の町からも、桃とオニに会うために訪れる熱狂ファンもいた。  あれから数年経った今、2人はこの村では欠かせない存在となったのだ。 「あら、オニさんは?」 「お料理教室の準備してるよ」 「お料理教室なんて始めたの?」 「今週から夏休みでしょ?子供たちのために開くんだ。あともう少しでみんな到着するはず」  カウンターの向こうでキッチンの扉が開き、褐色の青年が顔を出した。 「おい、桃。この色以外のエプロンはないのか?」 「ないって昨日言ったでしょ?パステルピンク似合ってるよ」  悪戯な笑顔を見せた桃はオニと客を交互に見つめた。あきらめ気味にため息をついたオニは小さすぎるエプロンを付けたまま、桃の隣に立つ。 「莉奈さん、おはようございます」 「あらあら、オニさん可愛くなっちゃって」 「褒めてませんよね」 「いやねー褒めてるわよ。子供たちに人気が出ること間違いなしよ!」  勢いよく扉が開き、子供たちが店内へと流れ込んできた。これからオニは忙しくなる。元気いっぱい、わんぱくな子供たち10人に簡単なケーキ作りを教えなくてはいけないのだ。 「みなさん、お口にチャックでオニさんについていきましょう」 「はーい!」  引率の大人が声を掛けると子供たちが大きく返事をした。明るい店内が更に明るさを増した気がする。   「それじゃあ、桃、教室やってくる」 「ん、頑張ってね」 「「あーー!!!ちゅーしたぁ!」」  賑やかな子供たちの声に包まれ桃が頬を染め、照れ隠しにオニの背中を押した。 「ふふふ、新婚さんみたいな反応をするのね、桃ちゃん」 「莉奈さんまでやめてよ」 「ほら、お代はここに置いとくからね」 「ありがとう」  こうして二人は、おとぎ話のようにいつまでも幸せに暮らしましたとさ。  めでたしめでたし。  

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