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身代わり③
お互いの体の境目がわからなくなるほど絡み合い、蕩け合う。
「咲夜、駄目っ!
イっちゃう...、やだっ!」
逃れようとする肩を押さえ、更に深く捩じ込んでいく。
すると駄目だと口では言いながらも、そこは俺を求めて蠢き、搾り取ろうとするみたいに締め付けた。
「いいよ、イけよ。
...イったら中に、出してやるよ。」
クスクスと笑いながら、胸の先端を少し強めに摘まむと、陽は言葉を無くし、ガクガクと震え、俺の上で達した。
宣言通り陽の腰を掴み、乱暴に突き動かす。
この時になると陽は、もはや嫌だと言う事すらも出来ないまま、ただ声をあげながら左右に激しく首を振った。
でもそんなのはやはり俺の事を煽るだけで、何の抑止力にもなりはしない。
「ほら、陽...イくぞ?
もっとちゃんと、締め付けろよ。」
完全に勃ちあがった彼の肉棒に手を伸ばし、激しく扱きあげながら、中も荒々しく犯していく。
あっけないくらい簡単に、陽は先ほど以上に大きく体を震わせ、俺の手の中で達した。
激しく締め付けられ、俺が中に吐き出すのとほぼ同時に、そのまま陽は気を失うみたいに眠ってしまった。
さすがに貪り過ぎたと反省し、ちょっと苦笑いをして、そのままいつものように体を綺麗に拭いてやり、コイツの小さく細い体を抱き締めた。
そして心地よい疲労感の中、俺も少し微睡みながら優しく頬に触れると、まるで子猫みたいに陽は俺の手のひらに顔をすり寄せた。
あまりの可愛さに思わず額にキスを落としたら、陽はふにゃりと笑って...そして言った。
「大好きだよ、サクヤ君。
...もう...を、置いて行かないで。」
綺麗な涙が一筋、彼の頬を伝って流れ落ちる。
その姿に、言葉に、一瞬の内に全身の血の気が引いた。
...よくあるチープな比喩表現などではなく、本当に心臓が止まるかと思った。
「どういう事だよ、今の...。」
戸惑い、慌てて唇を額から離した。
すると俺のひとりごとに反応したのか陽は目を覚まし、ヤンチャな笑みを浮かべた。
「ごめん!
また俺、いつの間にか寝ちゃってたんだな...。
でも咲夜、起こしてくれたら良いのに!」
つんと唇を尖らせて、いつものように少し拗ねた感じで言われたけれど、俺はうまく笑う事も、答える事も出来なかった。
だってもう、ずっと付きまとっていた違和感の正体に、気付いてしまったから。
陽は体は許す癖に、行為の時以外は本当の自分を見せてはくれない。
陽は俺の事を、サクヤ君なんて呼ばない。
ずっとコイツは、俺の。
...俺だけのモノだと、信じていた。
可愛い、可愛い、俺の陽。
でもそんなのは、完全なる思い上がりで。
...最初からコイツは、居なくなってしまったサクヤの身代わりにする為に、名前が同じというだけの理由で俺の気持ちに応じ、関係を持った。
コイツが好きなのは、俺じゃない。
...別の、サクヤだったんだ。
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