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prologue

生まれ持った運命に、与えられた道筋に、従順に従う以外の選択肢は……無いと思い込んでいた。 いつか誰かが閉ざされた部屋の扉を破り、外の世界へ連れ出してくれる……なんて、お伽噺話のような幻想を時折胸へと抱きながらも、現実にはありえないことと冷えた心は理解していた。 諦めに身をゆだねていれば、これ以上……墜ちる事だけは無い筈だと、信じることで心の均衡をギリギリの場所で保っていたのだ。 『いびつな恋の檻の中』 まわる、まわる。 ぐるぐる、ぐらぐら。 「キツい、ちょっと緩めろよ」  ――いたい、痛いっ! もう声さえ出せやしない。口を開けばヒッと喉が鳴り、空しく床を引っ掻く爪が、カリカリという音を立てた。 「これじゃあ顔が見えないな」 「うぐっ……うぅっ」 間延びしたような声の後、髪と頭を鷲掴みにされ、上半身だけ無理矢理後ろを向かせるように髪を引かれる。  両手を体の前で縛られ、獣の体位で犯されているから、苦しい姿勢に遥人(はると)が喘ぐと、噛みつくような激しいキスに口腔を深く塞がれた。 「んっ、んぅーっ!」 歯の隙間から侵入してきた舌に舌を絡めとられ、噛んでやろうと歯を立てると、尻をバシリと叩かれる。 「う゛っ……うぅっ!」 「いい貌……やっぱ掘り出し物だった」 ようやく解放されたと思えば、至近距離から見下ろされ、涙で歪んだ世界の中でも男が笑っているのがわかり、絶望的な気持ちになった。 「そんなに睨むなよ。すぐに気持ち悦くしてやるから」 「やっ、もうっ……やめろっ!」 こんな暴力的な行為で、気持ち良くなどなれる筈がない。 むしろ、穿たれるたびに吐き気を催し、気持ちが悪くてたまらないのだ。  ――どうして……こんな。 これまで、大多数に紛れるように、なるべく普通に生きてきた。なのに、こんな仕打ちを受けるなんて、遥人には到底受け入れられない。 「この辺……じゃない?」 「あっ……んぅ」 凶器のように自分を貫く彼のペニスが角度を変え、途端に漏れ出た甘さを含んだ自らの声に戸惑うが、それよりも……体を襲った変化の方が怖かった。

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