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「ほら、遥人の悦いところ、見つけた」
艶を纏った低い声。
悪魔がもしも存在するなら、こんな声音で喋るのだろう。ならば、そんな存在に捕らわれたのは、自分に落ち度があったからだろうか。
「あっ……も、やめっ!」
顔だけ背後を向かされている無理な姿勢からどうにか逃れ、這うようにして前へと逃げるが、彼と自分には体格差があり、手首も拘束されている今、簡単に状況を覆せるはずもない。
「止めてもいいけど、付き合ってくれる?」
「そ……それはっ、あうっ!」
浅い場所にある快楽のツボを潰すように穿たれて、
『断ったはず』
という返事は……紡がせてもらえなかった。
「いいよね」
凄味を帯びる男の声。
それでも頭を左右に振ると、「意外に頑固だ」と呟きながらペニスを抜き、遥人の体を抱え上げてから室内へと移動する。
「そうだよな。玄関じゃ嫌だったよな」
「ぐぅっ」
ワンルームの部屋に置かれたベッドの上へと放り投げられ、安いスプリングが軋む音がして、一瞬遥人の息が詰まった。
「時間もあるし、ゆっくり話そうか」
遥人が体勢を整える前に髪を掴まれて引き上げられ、薄い微笑みを浮かべた顔が視界一杯に広がる。
「いい部屋。余計な物が何もない」
辺りを見回し「病室みたい」と呟く男に、返す言葉も浮かばなかった。
逃げようにも、ここは自分の部屋だから、他に行き先などありはしないし、あったとしてもこの男から逃げる術が遥人には無い。
「……いわないから、誰にも、言わないから……だから、もう、止めて……ください」
掠れてしまったか細い声だが、きちんと聞こえていたらしく、喉を鳴らして笑った男は「なにが?」と短い言葉を返した。
「だから……こんな……うぅっ」
こんな事をされたなんて、誰にも言わない。
だから解放して欲しい……と、訴えようとするけれど、口を開きかけたところで、ベッドの上へと押し倒され、一纏めにされている手首を、ベッドヘットへと拘束された。
「俺は、遥人が誰に言ったって構わないよ」
綺麗に上がる片方の口端。
長い指先がシャツのボタンを一つ一つ開いていくが、縫い止められたように遥人は拒否する事ができなくなった。
ブレザーとスラックスは玄関で脱がされたから、今はワイシャツとアンダーだけしか着ていない。
こうなる前に抵抗し、暴力を受けたから……再び打たれる恐怖に脅え、無駄に男を煽らないよう睫毛を揺らして羞恥に耐えた。
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