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まさか、そんな直裁に尋ねるなんて思ってもみなかったから、動揺した遥人は体を強張らせ固く瞼を閉じた。 無理矢理視界を絶ったところで、彼らはいなくならないし、起こったことも無かったことにはならないと理解していても、今ここから逃れる手段はそれだけしか浮かばない。 「へえ、見せたんだ」 「俺が勝手に見ただけだ」 「そうなの? 遥人」 髪を撫でている玲の指から僅かながらの圧力を感じ、遥人は小さく頷いた。 あんなものを、自分から見せる筈などない。 「そういうのが好きな人種もいるってことは知ってるが、学業に支障をきたすようなやりかたは感心しない」 「珍しいね。宮本君が他人に構うなんて……もしかして好きになっちゃった?」 「論点をすり替えるな」 淡々と話す大雅の声と、飄々と流す玲の声。そのやりとりを聞いているだけで、遥人の心臓は壊れそうなほど速く大きく脈を打った。

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