58 / 338
12
まさか、そんな直裁に尋ねるなんて思ってもみなかったから、動揺した遥人は体を強張らせ固く瞼を閉じた。
無理矢理視界を絶ったところで、彼らはいなくならないし、起こったことも無かったことにはならないと理解していても、今ここから逃れる手段はそれだけしか浮かばない。
「へえ、見せたんだ」
「俺が勝手に見ただけだ」
「そうなの? 遥人」
髪を撫でている玲の指から僅かながらの圧力を感じ、遥人は小さく頷いた。
あんなものを、自分から見せる筈などない。
「そういうのが好きな人種もいるってことは知ってるが、学業に支障をきたすようなやりかたは感心しない」
「珍しいね。宮本君が他人に構うなんて……もしかして好きになっちゃった?」
「論点をすり替えるな」
淡々と話す大雅の声と、飄々と流す玲の声。そのやりとりを聞いているだけで、遥人の心臓は壊れそうなほど速く大きく脈を打った。
ともだちにシェアしよう!