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「……そうか」  今日はまだ平日だ。  だから、彼らはきっと学校へと行ったのだろうと考えながら、遥人はソファーへと腰を下ろす。  それから、少しの間呆けたように空を眺めた遥人だが、ついにはノロノロと体を動かし置いてある服を身につけ始めた。  ――どうしよう。  本来の真面目な気質上、置いてあったのが制服ならば、登校しようと考えたのかもしれないが、今の遥人には目の前にある状況だけしか見えていないし、自分の判断がどんな結果を生むのかなんて、想像すらもできやしない。  ――もしかして……今なら、逃げられるんじゃ……。  判断力が低下しているせいか、唐突に、そんな考えが頭に浮かんだ。  ――そうだ、今のうちに……できるだけ遠くへ。  あの悪魔から逃げなければ、頭がおかしくなってしまう。 「……くっ」  うまく動かせない体を叱咤し、用意されていた細身のボトムスとカットソーを身に付けてから、フラフラと玄関まで行き学校用の革靴を履いた。  扉へと手をかけた時……体が勝手に震えだしたから、頭を振って玲の姿を脳裏から消そうと試みる。  ――ダメだ……急がないと。  切迫感にさいなまれながらも勇気をだして扉を開き、人気の無いのを確認してから、遥人は廊下へ脚を踏み出して寄りかかるようにドアを閉めた。  登下校では通っていたから、建物の造りは覚えている。あとは、エレベーターで一階へと行き、エントランスから外に出られれば、玲と堀田から逃げられるなどと安易に考えてしまうのだから、やはり遥人の精神状態はかなり追い詰められていた。

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