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 そこからは、夢の中にでもいるみたいに現実味のない時間となる。  動かせなくなった体を大雅に担ぎ上げられた時には、流石に微かな抵抗をしたが、そんな行動は軽く無視されてエレベーターで下へ運ばれた。  閉まる扉の向こう側に堀田の姿が見えた気がするが、彼がどんな表情をしていたかはっきりとは覚えていない。  きっと、自分自身が思っているよりかなり混乱したのだろう……汚いから降ろして欲しいと大雅に訴えようとしても、まるで出し方を忘れたみたいに言葉が声にならなかった。  そして――。 「一人じゃムリだろ?」  今、遥人が置かれているのも嘘みたいな状況だ。 「ごめんなさい……あとは、一人でできますから……」  マンションから外へ出た途端、横付けされた車に乗せられ、シーツのような大きな布で体をぐるぐる巻きにされた。 『少しの間だから我慢しろ』  そう言い放った大雅の声に、遥人は体を硬くしたけれど、移動している間中、ずっと背中を擦ってくれたから怖いなどとは感じなかった。  目的地へ到着してから再び体を持ち運ばれ、ようやく視界が開けたのが、この浴室の中となる。

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