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「ムリだろ。お前、腰抜けてるし」
目の前に立つ大雅が少し困ったように眉根を寄せた。
この浴室には見覚えがある。
初めて玲に犯された後、なぜか大雅に付きっきりで介抱されていた時に、何度か入った浴室だ。
――あの時も、今も、どうして彼は……。
そんな疑問が浮かぶけれど、やはり思いは声にならない。
広さのある浴室の床は岩のような風合いで、床暖房が入っているのか、ついた掌に熱を感じた。
壁は柔らかなクリーム色の漆喰が塗られており、大人が数人入れそうな浴槽には、桧が使用されている。日本風だが天窓からは陽の光が射し込んで、古風というよりスタイリッシュな雰囲気が漂っていた。
「逃げるな、ただ体を洗うだけだ」
床に降ろされた遥人のズボンを大雅が脱がそうとしたものだから、こんなやりとりになっているのだが、遥人としては情けない姿を彼に晒してしまった上、これ以上の迷惑なんてかけられない。
「でもっ……」
反論の為、小さな声をようやく喉から絞り出した時、目の前に膝をついた大雅がこちらへと腕を伸ばしてきた。
「まったく、世話の焼ける」
「……っ!」
焦った遥人は這うようにして逃げを打つが、その動きは自分でも驚くくらいに緩慢で……だから、押さえ込むようにウエスト部分を掴んだ大雅に、たやすく体は引き戻され、とうとうズボンを脱がされてしまう。
さきほど服を身に付けた時、下着の用意は無かったから、たったそれだけで下半身を隠す衣類はなくなった。
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