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「諦めろ」  告げてくる声は短いけれど、抑揚が無いからなのか、有無を言わせぬ雰囲気がある。 そんな大雅の言葉に遥人が動きをピタリと止めたのは、抑え込んでくる強い力に、駄々をこねるような真似をしても無駄だと理解したからだった。 「痩せたな」  従順になった遥人の体からカットソーを脱がせた大雅がポツリと呟く。  体中、いたるところに張り巡らされた縄痕に、目を細めたのが分かったけれど、恥ずかしくても隠せないから遥人は自ら視界を閉じた。 「んっ……」  シャワーの音が聞こえてすぐに体に飛沫をかけられる。掠り傷となっている箇所に染みて小さな呻きを上げると、水圧が少し弱まったから、遥人は息を吐き出した。  それから、彼に背中を預ける格好で座らされ、ボディーソープをつけた掌で体中を洗われたのだが、精神的にも身体的にも疲労がピークに達したためか、そんな状況にも関わらず、遥人はいつしか眠りに落ちた。

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