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「おはよう。最近調子悪いみたいだけど、大丈夫?」
「うん、もう大丈夫。ありがとう」
数日ぶりに登校し、自分の席へと座ったところで、前の席の生徒がこちらを振り返って聞いてきた。
こんなことが前にもあったと思いながらも返事をすると、人好きのする笑みを浮かべて
「なら良かった」と答えた彼が、「ところでさ……」と続けてくる。
「どうして今日は今泉君じゃなくて宮本君と来たの?」
「それは……」
勘ぐっているというよりは、純粋に疑問だという様子で聞いてくるから言葉に詰まった。
「通学路が、たまたま一緒で……」
「ああ、そうか。宮本君も御園君も徒歩だもんな。変なこと聞いてごめん。宮本君って孤高って感じだから、二人が一緒に登校してきて驚いたんだ。それに……御園君って今泉君と付き合ってるんだろ? その……嫉妬とか、大丈夫?」
教室内をチラリと見回し、玲がいないのを確認してから、内緒話のように告げられて遥人は瞳を大きく見開く。
「付き合ってるって……一体、どういうこと?」
「あ、もしかして内緒のつもりだった? ごめん、俺また余計なことを……」
詳しく話を聞こうにも、予鈴が二人の会話を遮り、「ごめんごめん」と手を合わせながら彼は前を向いてしまった。
教室内を見渡すと、いつのまに登校したのか堀田の姿が目に入る。
途端、条件反射のように体がカタカタと震えだすけれど、机の下で掌を握って感情を胸に押し込めた。
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