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 腕を引かれて裏道を走り、少ししてから大通りへと出たところで、ようやく徒歩へと切り替わったが、彼が立ち止まることはない。  ――いったい、何が……。  それから、スーツの男が止めたタクシーに4人で乗り込み、結構な距離を走ったけれど、行き先も上手く聞き取れず、会話らしい会話もないまま時間だけが過ぎ去った。  *** 「お前、本当に上手く行くと思ってたのか?」  促されるまま部屋へと入った遥人が辺りを見回していると、備え付けてあるソファーへ座った大雅が声をかけてくる。  彼に連れられてやってきたのは、市の郊外に建っているという立派なリゾートホテルだった。  広い森に佇んでいる西洋の城のような建物は、豪華だけれど風格があり、同じような建築物には学校や祖父の家で免疫がついている遥人だが、めまぐるしい状況の変化に頭がついていけずにいる。  一緒にいた男たちは、部屋の前まではついてきたのだが、中まで入ってこなかったから、結果広い部屋の中に大雅と2人きりとなった。 「どうして……分かったんですか?」 「そんなことはどうでもいい。質問に答えろ」  有無を言わせぬその雰囲気に、遥人の体がビクリと震える。  表情にこそ出しはしないが、もしかしたら大雅はかなり腹を立てているのかもしれない。

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