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「ありがとう。もう行っていい」  低く響いたその声に、頭を過ぎった最悪の結果じゃなかったとを理解するが、混乱しすぎて座り込んだまま動くことができなくなる。 「お前……ホントに大胆なのか気が小さいのか分からない奴だな」  そんな遥人を見下ろしながら部屋へと入って来た彼は、抑揚もなくそう告げながら、後ろ手でドアをカチャリと閉めた。 「立て。とりあえず場所を移る」 「……どうして?」  ようやく絞り出した質問に、深いため息を吐いた大雅は、「話は後だ」と短く答え、部屋の片隅に纏めておいた遥人の荷物を肩へと担ぐ。 「ここにいて、捕まりたいなら話は別だが」  そして、告げられたのは物騒な言葉。  落ち着きのある低音の中に、僅かな焦りを感じた遥人は、不安に体を震わせながらもふらつく脚で立ち上がり、誘われるまま大雅と共に部屋の外へと歩み出た。  こんなに遠くへ逃げたというのに大雅が現れたということは、自分の動きはいとも簡単に把握されてしまっていたのだ。  廊下へ出るとスーツを纏った男が二人立っていて、見た目はいたって普通のサラリーマンといった感じの彼らが、大雅へ頭を下げる様子に遥人は違和感を覚えた。 「こっちだ」  3階に借りた遥人の部屋から1階へと降りた大雅は、従業員専用のドアを開いて遥人に告げてくる。  躊躇しながらも後ろへ続けば、中にいる従業員へと何かを握らせ大雅はそのまま裏口から外へと出た。

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