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「世間知らずなお前が闇雲に動いたところで、今よりさらに酷くなるだけだ」 「そんなことはないと思います。今日も面接に受かって、住み込みで働かせてくれるって……」 「相手はヤクザだ。それでもアタリなら、稼ぎの殆どを家賃に取られてタダ同然で使われるくらいで済むかもしれないが、ハズレを引けば男色ジジイ相手に身売りさせられるか、使えなければ臓器を売り払われる」  淡々とした口調ながらも、その内容は遥人の想像を超えていて……言葉も返せず震えていると、まるで心を読みとったように「調べれば分かることだ」と抑揚もなく大雅が言った。 「俺がヤクザの息子だって噂くらい聞いたことあるだろう? あれは本当だ。俺のじいさんは組長、父親が若頭をしている。お前は簡単に家を抜け出せたと思ったかもしれないが、俺の指示で見張りを付けておいた。だから、お前が仙台に着いた段階で、居場所は既に把握してた」 「そんな……」 信じられない彼の話に、落胆という言葉なんかじゃ足りないほどの衝撃を受ける。 「お前は……自分の価値が分かってない。御園がどれだけ……」 大雅の声へと耳を傾け、必死に頭に入れようとするが、こんな場面でどういう訳か強烈な眠気が襲ってきた。 「あの、ちょっと……まって……くださ……」 遥人の意志とは裏腹に、瞼が勝手に閉じてしまい、体が言うことを聞かなくなる。

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