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―――確かに飯島 藍子と関係を持った。
彼女とは同期でお互いにまぁ良き同僚、といった感じだったんだ。
若い頃もそこに恋愛感情とかそういう生臭いモノは無かった、と思う。
そうこうするうちに、彼女が結婚して3年。
……きっかけはちょっとした事だったと思う。
残業続きで疲弊してたって言い訳や、相手も乗り気だったという責任転嫁したくなる気持ちもある。
それからズルズルと、ほんとなし崩しに身体の関係だけが続いた。
大抵彼女の方が、夫婦関係や仕事が上手くいってないとそんな雰囲気になって。俺がこれ幸いとそれに乗るって感じ。
我ながらクズだけど。俺たちだって人間だ、仕方ないだろって開き直ってた。
「まさかこんな事になるなんて……」
「え?」
思わず口に出ていたらしい。
何故かすぐ後ろにいた、藍子の声がして慌てて『なんでもない』とかぶりを振った。
「そう。……ねぇ、優希」
俺の名を囁く唇は艶めいている。
関係を持つまで、体育教師の特性か化粧っけもなく唇はむしろ少しカサついていたくらいだったのに。
……女はセックスで変わる、というのは本当らしい。
「あの飯島先生。うちのクラスの橘ですけど」
「……橘? ああ、あの子」
少し不満げに口を尖らせて言った。
普段ならその仕草も可愛らしいと思うのだが、今はそんな気になれない。
八つ当たりするようだが、彼女の存在も忌々しく思える程なのだから。
「サボり癖酷いんでしょ。体育なんてほぼほぼ出たこと無いわよ。何かと理由つけて、体操服にすら着替えないし」
いわゆる問題児よね。と苦々しい顔で口にする彼女に俺は適当な相槌を打ちながらも、どこで彼女と俺との関係を知ったのだろうと考えていた。
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