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座敷わらしの家
僕は不幸だった。
生まれ持ったものは良かったのかもしれない、周りからは可愛がられるし、容姿もいいらしいけれど、そんな容姿が災いして犯罪に巻き込まれることも多数。
両親は事故で亡くなり、僕のことは遠い親戚が引き取ってくれた。近しい親戚は皆”不幸を呼ぶ子”だとか言って引き取ろうとはしなかった。
現在僕を育ててくれているのは白鳥という家で、優しい両親と、僕を溺愛してる兄が一人の3人家族だ。引き取り手には恵まれたと思う。
「リョウ、その怪我どうしたんだ?」
兄の白鳥和也は僕の膝をみて心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
「階段で転んじゃった。」
「痛くないか?ほら、おぶってやる。うち帰ったらちゃんと消毒しような。」
「うん。」
不幸気質のせいで生傷の絶えない僕は兄におぶられて帰らない日の方が少なかった。
家族はそんな僕の事を不幸の子などとは呼ばなかったしいつも心配してばかりだったが、僕の不幸とは裏腹に白鳥家には幸運ばかりが舞い込んだ。父さんにはトントン拍子に出世の話が舞い込み、母さんが買った宝くじはあたり、兄ちゃんは偏差値の高い高校に受かった。
どうやら両親は出世の話や宝くじのこともあって新しく家を買うことにしたらしい。相変わらず怪我をした僕が家に帰ると僕の傷の手当てをしながら母さんは言った。
「私の実家の方にね、座敷わらしが出るっていう家があるのよ。」
「座敷わらし?」
「そう、座敷わらし。幸運を運んでくださるの。私達その家に引っ越すのよ!きっとリョウちゃんにも幸せを運んでくれるわ。」
***
多少田舎ではあったけれど不便のないところに座敷わらしが出るという家はあった。なんの変哲も無い家で、僕の不幸体質がなおるとは到底思えなかったけれど、数日過ごすうち僕には初めて同年代の友達ができた。その子は僕の家の庭から山の方に抜ける道があることを知っていて、初めてあった時もそこから突然現れた。
「誰…?」
「あ、新しい住人さん?僕はよくここで遊んでる童部 シキだよ。いつも空き家だから遊びに来ちゃった、ごめんね!」
「ううん!遊びに来るのはいいんだ、名前が聞きたかっただけ。」
「君の名前は?」
「僕は白鳥リョウ。一昨日ここにひっこしてきたんだ。」
「リョウ、いい名前だね。よろしく!」
日本人には見えない栗色の髪と海のような碧眼をした彼は僕と同じくらいの歳に見えた。気さくで、ちょっと強引なところのある子だった。
彼は毎日のように庭に遊びにきては僕といろんな話をしたけれど、両親や兄に紹介することは嫌がったし小学校にも彼はいなかった。
「僕ね、友達が出来たんだ!シキくんっていうんだけどね…」
僕は毎日彼とのことを家族に話した。不幸を呼ぶ子と言われて友達が出来なかった僕の初めての友達だったから。それに不思議と彼と会い始めてから僕には不幸なことが起こらなくなった。まるでシキくんは噂の座敷わらしみたいだった。
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