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第3話 ⑦
翌日はいつも通り午前十時頃に起きて、一階の事務所へ向かった。
「遅いぞお前ら」
ドアを開けると、亮次がだるそうに椅子に座って机に頬杖をついていた。
「遅い? いつもと変わらないと思うけ、ど……」
快の言葉が途切れたのは、来客用のソファに座っている朋希に気づいたからだ。
「なんでここに?」
思わず口から出た快の疑問に答えたのは亮次だった。
「依頼に来たんだとよ。うちは今、そういうのは受け付けてねえって何度も言ったんだがな」
依頼を受け付けていないことは快も今初めて知った。最近ずっと探偵事務所としての依頼がなかったのはそのせいだろうか。
「誠二郎さんの代わりに、箱を探してほしいと依頼をしに来ました」
快と悠利のほうへ、朋希がにっこりと笑う。だが正確には笑いかけたのは悠利に向けてだけだ。
「つーわけだ。頼んだぞお前ら」
「は? って丸投げかよ」
「知り合いなんだろ?」
知り合いというか、悠利の親戚だ。快もどうやら以前に会ったことがあるらしいのだが、全く覚えていない。
黙ったままの悠利はどうやら了承するつもりはなさそうだが、朋希のほうも引き下がる気はまるでなさそうだ。
面倒なことになりそうな予感に、快は小さくため息をついた。
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