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きみさえいれば(1)

会社勤めの俺は、毎日電車で通っている。 家から駅までは徒歩五分の距離だから、そこはもちろん歩き。 その通り道には、ブランコや鉄棒にシーソーまで、わりと遊具が充実している大きな公園があって、土日の昼間は子どもたちがわいわい騒いでとても賑わっている。 けれど、平日の俺の帰宅時間にはほとんど遊ぶ子どもたちはいない。今は夏だから日が沈むのも遅いし、夕方の六時でも十分に明るいのだけれど。 だから俺はいつものように、特に何も気にすることなくその公園を通り過ぎようとした。 けれど、珍しく楽しそうな笑い声が聞こえてきて。 何となく気になった俺は足を止め、それから声のする方へと視線を向けた。 「……え」 視界に入って来たのは、恋人の龍。でもいつもなら、まだ仕事が終わっている時間じゃないはず。 それに、こんなところで一体何をしているのか。仕事を早く終えられたのなら、先に家に帰って俺を待っておけば良かったんじゃあないの? 「龍……? 何、してんの?」 声が震える。口の中が緊張で乾くから、ゴクリと無理矢理唾を飲み込んだ。 「あ、たける帰って来た」 俺に気づいてホッとしたのか、龍が安堵の表情を浮かべる。そしてひらひらと手を振りながら、少しずつ俺の方へと近づいて来た。 「俺、携帯も鍵も忘れて仕事に行ってたみたいでさ。出張場所から直で帰宅したはいいものの、鍵が無かったから入れなくて。さすがにドアの前で待つのは恥ずかしいから公園で暇つぶしながら待ってた」 “ばかだよなぁ” そう言って、龍は指先で鼻を掻きながら、照れた様子で少しだけ頬を緩ませた。

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