「そう……」 そんな龍に対して、俺はいつもなら笑って返すであろう返事がうまくできず、上の空で返事をし、視線を龍から動かした。 「……。」 龍が公園にいる理由は分かったけれど……。それは、分かったんだけどさ。 「えっと……」 それでも、龍の言葉と目の前の状況がうまく一致しないせいで理解ができない。 だって、俺の視界に入って来たのは、龍だけじゃあなかったんだ。 ねぇ……。さっきから、当たり前のように肩車してる……その女の子は誰なの？ 隣にいる女性は？　その子の母親？ 何で楽しそうにしてんの？ そんな知り合いいたっけ？ 仕事が終わって公園に来てから今までさ、ずっとその人たちといたの？ 何となく、本当に何の根拠もないのだけれど、嫌な予感がして。思わず握りしめた手が汗で湿った。ドクドクと、少しずつ心音が大きくなり、呼吸も苦しい。 そんな俺の様子には気付いていないのか、龍は女の子を肩から下ろすと「高い高ーい」と言って、最後にもう一度高くその子を抱き上げた。 きゃっきゃと楽しそうに笑う女の子。はしゃぐ女の子を見て微笑む龍。 俺は複雑な気持ちで、しばらくの間その光景を見ていた。