18 / 224
素直になれないの(9)
「見んなよ、ばか……」
すぐに顔を隠されたから、一瞬だけしか見られなかったけど。
先輩の顔、すごく真っ赤だった。
隠しきれずにほんの少しだけ見えている耳も、触ったら熱そうなくらい真っ赤になっている。
きゅん、とまた胸が音を立てる。
「先輩……、」
「んだよ」
「す、き」
「っだから、もう……!」
そういうところが可愛すぎるんだと、先輩が舌打ちをする。
よく分からないけど、今なら甘えられる気がするから。俺はゆっくりと手を伸ばし、先輩の背中に回した。
「お前、今の状況分かってんの、」
「知らない……」
「知らないって、俺、お前のこと押し倒してんだぞ」
「……ん、」
抱きついたせいで先輩との距離がなくなって。
服越しだけれど、先輩の体温が伝わってくる。
心音もバクバクしてて。
なんだかそれだけのことで、また涙が出てきた。
「今日はよく泣くな」
「ん、」
「陽呂、可愛い」
「ん、」
「すっげー好き」
「……ん、」
結局俺がずっと泣いてるから、先輩は何もできなくて。
ぶつぶつと文句を言ってたけれど、それでも優しく抱きしめてくれていた。
END
ともだちにシェアしよう!