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素直になれないの(9)

「見んなよ、ばか……」 すぐに顔を隠されたから、一瞬だけしか見られなかったけど。 先輩の顔、すごく真っ赤だった。 隠しきれずにほんの少しだけ見えている耳も、触ったら熱そうなくらい真っ赤になっている。 きゅん、とまた胸が音を立てる。 「先輩……、」 「んだよ」 「す、き」 「っだから、もう……!」 そういうところが可愛すぎるんだと、先輩が舌打ちをする。 よく分からないけど、今なら甘えられる気がするから。俺はゆっくりと手を伸ばし、先輩の背中に回した。 「お前、今の状況分かってんの、」 「知らない……」 「知らないって、俺、お前のこと押し倒してんだぞ」 「……ん、」 抱きついたせいで先輩との距離がなくなって。 服越しだけれど、先輩の体温が伝わってくる。 心音もバクバクしてて。 なんだかそれだけのことで、また涙が出てきた。 「今日はよく泣くな」 「ん、」 「陽呂、可愛い」   「ん、」 「すっげー好き」 「……ん、」 結局俺がずっと泣いてるから、先輩は何もできなくて。 ぶつぶつと文句を言ってたけれど、それでも優しく抱きしめてくれていた。 END

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