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僕のヒーロー(1)
「お前ふざけてんの?」
「俺が頼んだのはコロッケパンだろーが」
昼休みの屋上。
風がほどよく吹いて、空は海みたいに真っ青でとてもきれい。
本当だったら心地良い場所のはずなのに。
「ごめんなさい……。売り切れて、たから……」
どうして僕は。
「いたっ、嫌だ……!」
僕だけ……。
クラスメート数名に、千切れそうなくらいに強く髪を引っ張られる。
いつもいつも、こうして僕をいじめるんだ。
誰も見てないところで、こうやって。
たかがパン一個じゃあないか。しかも今日は四時間目は移動教室。
購買から遠い、その教室から僕を脅して走らせたりしてさ。
食べたいのなら、自分で買いに行けばいい。
「違うやつ買って来たんだから、金は無しな」
結局はこれが目的。知ってるよ。
わざわざ数の限られているコロッケパンを買うように命令して、買って来なかったら金を払わないんだ。
“いつまで学校に来んの?”
“お前いじめられんの好き?”
ケラケラと笑うコイツらが憎い。
だけど、僕の力じゃ敵わないから。
意地でも学校に来続けるんだ。
これが僕の、彼らに対するささやかな抵抗。
でも、
でもね?
人間ってのはどんなに頑張っても限界が来るんだよ。
もう無理だ……。明日から来るのやめようかな。体中傷だらけ、もちろん心だって傷だらけ。
僕には味方が誰もいない。
「────ねぇ……、いい加減にしたら?」
突然僕の後ろから聞こえてきた声。
僕を殴ってた奴らも急に手を止めた。だんだんと青ざめていく奴らの顔。
誰……?
恐る恐る振り返ると、学年一の不良、椎名秋人くんがいた。
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