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僕のヒーロー(2)
「し、椎名、どうしてっ、」
ついさっきまで僕をいじめていたヤツらは、椎名くんを見るとすぐに後退りした。
確かに、椎名くんの登場はとても不思議だ。
……どうして?
僕は半年この学校に通ってて、椎名くんとは同じクラスだけれど。
授業もちゃんと受けていないし、そもそも教室に来ないから顔を見ることはめったにない。普段は学校に来ているのかすらも不明だし。
「俺がさぁー、何でここにいるとか、別にどーでもいいんじゃねぇ?」
「……っ」
「数人対一人ってさぁ、卑怯なことしてんね。何? 力に自信ねぇの?」
クスクスとバカにしたように笑いながら椎名くんが僕たちに近づく。
僕がコンクリートの上に座っているからかな? 見上げた椎名くんは、とても大きく見えた。
「椎名くん……」
隣に来た椎名くんを見上げたまま、小さな声で名前を呼ぶと今度は優しく笑ってくれた。
「夏樹はよく頑張ったって思う。俺がいいって言うまで、目ぇ瞑ってて」
僕の名前、知ってたいの……?
驚いて目を開くと、ぷはって笑って、僕の頭をよしよしと撫でてくれた。
その手が大きくて温くて、涙が出そうになる。
頑張ったって……。
僕のこと、頑張ったって、そう言ってくれた。
たった一言で心が温まる。僕を見ていてくれた人がいたんだって。認めてくれた人がいるんだって。
もうそれだけで十分だ。
僕は、静かに目を閉じた。
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