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クリスマスイブ(4)
「はい、こっちが本当のプレゼント」
「え?」
泣きながら諏訪部さんを見上げれば、胸元をとんとんとつつかれる。
優しく笑う彼から視線をそこに動かすと、俺の首にはいつの間にかネックレスがかかっていた。
「あ、これ……」
シンプルなデザインのネックレス。
少し離れていたからはっきりとは見えなかったけれど、諏訪部さんが手にとって見ていたものに似ている気がする。
「ん?」
ああ、もしかして。
「由美子さんと」
「え? 由美子? 桜井くん、由美子知ってるの?」
思わず俯いた俺に、諏訪部さんは驚いた声をあげるも、心配そうに俺の顔を覗き込む。
あの時、由美子さんのじゃなくて、俺のプレゼントを選んでくれてたんだ。
諏訪部さんは、俺のために。
「……っ、」
そうだったんだ。嬉しいなぁ……。
「さ、桜井くん?」
「お、れ、勘違い、して……」
デパートで二人を見かけたこと。すごくお似合いだと思ったこと。今日は二人で過ごしてるって思ったこと。諏訪部さんを待つ間、寂しかったこと。
泣きながらすべてを話すと、諏訪部さんは、ははっと笑ってもう一度抱きしめてくれた。
「由美子は幼なじみなんだよ。もう一人、義行って幼なじみがいるんだけど、ソイツと結婚してるから、桜井くんが心配するようなことは何もないよ」
「諏訪部、さん……」
俺、期待していいんだよね。
「ははっ、もう、桜井くんてば可愛いなぁ」
「諏訪部さ……」
もう、気持ち、止められないよ。
「ん?」
「キス、して、」
自分でも驚くくらいに大胆な言葉が、口から勝手に溢れでた。
恥ずかしいけれど、でも、これは本心だから。
諏訪部さんのものに、なりたいよ。
「っとに、もう。君って子は……」
「んぅ……、ふ……」
俺の後頭部に手を回し、自分のほうに引き寄せながら、角度を変えて何度も何度もキスをくれた。
絡まる舌に、漏れる吐息に、興奮して体温が上がる。
「す、き、」
「ん」
「諏訪部さんが、すきっ」
「俺も、桜井くんが好きだよ」
“ご飯の前に、まず君を食べてもいいかな?”
甘い声で囁かれ、俺はゆっくりとうなずいた。
それから少し背伸びをして、諏訪部さんに自分からキスをした。
END
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