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もう一度(1)
「俺といたら疲れる?」
ゆっくりとした口調で、君が呟く。
「別れよっか……」
いつか言われるだろうと、覚悟していたその言葉。
大好きな君にそう言われて、本当は別れたくないと、泣いてすがりたかったけれど。
そんなこと、できるはずもなく。
それに、覚悟はしていたわけだし、こうなるほうが君のためには良かったと、僕もそう思うから。
きゅっと口を結んで、僕は静かに頷いた。
サークルで初めて彼を見た時、その柔らかい笑顔に胸がどきりとしたのを覚えている。
話をしてみて、笑顔だけじゃなく、中身もすごく素敵で温かい人だと思った。
「りょうさん」って、僕の名前を呼ぶ声が優しいなって、そう感じた。
共通の授業が被った時には、当たり前のように隣に座った。
教授のつまらない授業も、彼が隣にいるだけで楽しく思えたし、隣にいるのはとても心地よかった。
お昼休みには、食堂で一緒にご飯を食べた。
何かやたらと会話が弾むわけではないけれど、無言で過ごす時間さえも、僕にとって大切な時間になっていった。
そうやって同じ時間を過ごしてるうちに、いつの間にか彼を好きになって。
隣に座る彼……陽呂の、かっこいい横顔を見るだけで、一人の時間に陽呂のことを思い浮かべるだけで、胸が苦しくなるようになった。
あぁ、僕は、陽呂のことが好きなんだなぁ。
自分のその気持ちに気づいた時には、叶わない恋をしてしまったとたくさん泣いた。
だけど。
それでもこの想いを大切にしていきたいと、そう心に決めたんだ。
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