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もう一度(2)
僕と陽呂が付き合うことになったのは、彼のある一言がきっかけ。
『りょうさん、俺のこと好きでしょ?』
突然そんなことを言われて、どうしてバレてしまったのかととても驚いたし、それと同時に、もうダメだってそう思った。
てっきり拒絶されるものだと思い込んでたから。
だけど陽呂は、僕の考えとは全く逆のことを言ったんだ。
『付き合おっか』
こんな言葉が、彼の口から出てくるとは思ってなかった。
そして何より同じ気持ちでいてくれたことがとても嬉しかった。
陽呂は、僕の大好きな笑顔で笑ってくれていた。
好きな人が自分のことを好きだったなんて、考えるだけで幸せなことなのに。
男を好きになってしまった自分にも、そういう幸せが訪れたことをたまらなく嬉しく感じた。
付き合い始めてからは、何度も一緒にご飯を食べて、色んな場所でデートもした。
何度もお互いの家に遊びに行ったし、たまには抱きしめてキスをしてくれた。
だけど、それだけだった。
家に泊まったこともあったのに、それだけだった。
陽呂がそれ以上をしてくれることも、好きと言ってくれることもなかったの。
ただ一緒にいられればそれで良かったから、不満とかはなかったのだけれど。
それでもやっぱりその状態が続くと、不安がだんだんと大きくなった。
やっぱり男だからダメなのか、それとも僕だからダメなのか。
もともと年上だからってのもあって、陽呂にうまく甘えることができなかった。
「好き」も「抱きしめて」も「キスして」も。
もちろん「抱いて」なんて言葉も、言うことはできなくて。
僕は前とは違った意味で、胸が苦しくなるようになった。
別れたほうがいいのかな……? って思うこともあったけれど、陽呂が好きだから、僕からはその言葉は言えなかった。
でもあの時、『りょうさん……』って呼ばれて、なんとなくもうだめなんだなぁって思った。
僕のせいで無理してるなら、僕と一緒にいて楽しくないのなら……。
“大好き”って、大切な想いを、僕は溢れ出ないように押し込めた。
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