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もう一度(3)

━━━━━ 陽呂と別れてから、授業で隣に座ることもなくなったし、サークルにもあまり顔を出さないようになった。 それから、土日はどこにも出かけることなく、家に閉じこもることが増えた。 陽呂とのスケジュールでいつも埋まっていた時間も、今では何もすることがなくなったから。 出かける気なんかおきなくて、ただ家でぼーっとテレビを見て過ごした。 だけど、家にいたらいたで、何度もこの部屋に遊びに来た陽呂との思い出が頭をちらついてしまう。 だから僕は、久しぶりに出かけてみることにした。 騒がしいところに行けば、この沈んだ気持ちも少しは楽になるのかなぁ。 そう思ったのに。 それが間違いだったと、すぐに気づかされた。 だって、見つけてしまったんだ。 相変わらずおっきくて、何度も抱きつこうとしたけれど結局恥ずかしくてそれが出来なかった大好きな陽呂の背中を。 そして、その隣にいる小柄な女性を。 今まで僕の居場所だったその場所に、違う人がいた。 後ろから見ただけで十分に分かる。 きっと、可愛らしくて素敵な人。 「……っ、」 男の僕よりも、陽呂にふさわしい。 もともとあの場所は、僕がいていい場所じゃなかったんだ。 特別なあの笑顔を見られるのも、温もりを感じられるのも、僕じゃない。 『りょうさん』 でも、でもね。 僕は陽呂が、大好きだったの。 もう一度、呼んでよ。 僕の名前を、呼んで……。

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