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もう一度(4)
「ひ、ろ……!」
“とんでもないことをした”
そう気付いた時には、もう何もかもが遅かった。
足が、勝手に動いたんだ。
自分でコントロールできなかった。
僕は、二人を追いかけたうえに、陽呂の服の裾を掴んでしまった。
楽しそうな雰囲気を、僕が壊してしまった。
陽呂と彼女さんが、驚いて僕を見る。
「え……? りょうさん……?」
大好きな陽呂の声が聞こえる。
久しぶりに聞いた君の声。
“離さなきゃ”
“でも離したくない”
“もう別れたんだから”
“でもまだ好きなの”
色んな考えが、頭の中をぐるぐると回る。
そうこうしているうちに、僕の手に陽呂の手が重ねられた。
……温かい。
「みさき、悪いけど一人で帰って」
「うん、分かった。今日はありがとう。プレゼントもありがとう」
「うん……、ごめんな」
二人の会話を聞いていたら、涙が出てきた。
結局、終われてないのは僕だけなんだ。
陽呂は前に進んでる。
いつまでも引きずって、別れたのに迷惑をかけて。
僕は、勝手だね。
「ごめんなさい……」
まだ好きでごめんなさい。
邪魔してごめんなさい……。
「ごめん、な……さい……」
謝罪の言葉と一緒に、大粒の涙がこぼれ落ちた。
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