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もう一度(11)
「あ……」
あぁそうか。
俺が、言わなかったからだ。
りょうさんへの気持ちを、ほとんど口にしたことがなかったから。
でもそれは……なんて言い訳、今さらしたところで何の意味もない。
りょうさんは、ずっと不安だったよね。
俺から付き合おうって言ったのに、気持ちを言わなかったんだから。
だから、笑わなくなったんだ。
「りょうさん、俺が気持ち言わなかったから不安だったんだね?」
「ひ、ろ」
「りょうさんがね、キスする時に目をぎゅって瞑るようになってから、それ以上をして怖がらせたくなかったんだよ。だから、気持ちを言えなかった」
「え……、」
「気持ちを言ってしまったら、好きが溢れて止まらなくなるって思ったから。またりょうさんのこと怖がらせちゃうって」
「りょうさん、好きだよ。一緒にいない間も、ずっとりょうさんのこと考えてた。……考えない日なんて、そんな日はないんだよ」
目を大きく開いて、口まで開けて。
一体何を言ってるの? って顔で、りょうさんが俺を見てる。
信じられないって?
俺の気持ち、信じてくれないの?
「りょうさんが好き」
何度だって言うよ。
これからは何度だって言う。
不安になんかさせない。
もういいからって、あなたが呆れてしまうくらいに、この気持ちをぶつけてやるんだから。
「ひ、ろ……っ」
「泣き虫」
見開かれていた目は閉じられて、顔がくしゃくしゃになってる。
涙はボロボロ溢れ出て、頬を伝って床に落ちていく。
「ふ……、うっ、」
あぁ……、たまらなく愛しい。
俺を想って泣くりょうさんに、胸が温かくなる。
「りょうさん、好きだよ」
「……ふぇ、」
「すごく、好き」
「うぁ、」
りょうさん、たくさん泣かせてごめんね。
でも、今日で最後にするから。
もう絶対泣かせないし、二度と離さない。
「りょうさん」
「……っ、ぅ……あ、」
「好きです。俺と、付き合ってください」
ずっと大事にするから。
だから、もう一度。
ふにゃりと笑ったりょうさんの、その笑顔に、目頭が熱くなった。
END
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