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もう一度(10)

***** 小さく呟かれる「好き」の言葉に、俺の都合の良い聞き間違いではないと確信した。 りょうさんは、まだ俺のことを想ってくれている。 俺と、同じ気持ちなんだ。 「りょうさん……」   小さい子どもをあやすかのように、何度もりょうさんの頭を撫でる。 「りょうさん。……俺のこと、まだ好きでいてくれるの?」 「う、ん……」 顔を覗き込んでそう確認すれば、きゅっと目を瞑って何度も頷いてくれた。 夢じゃないんだよね。 だって、目の前にりょうさんがいて、俺はあなたに触れてるもの。 温もりだって、ちゃんと感じてる。 ……りょうさんを、もう一度俺のものにできるんだ。 嬉しい。また一緒にいられる。 りょうさんに、触れられる。 だからね。 もう謝らないで。別れようって言った、俺が悪いんだから。 「りょうさん、」 「ごめん、なさ、い……」 「りょうさん、もう謝らないで、」 「ごめ、ん、なさ……い」 「ううん。悪いのは俺だよ。ごめんね、りょうさん」 俺は小さな肩を震わせて泣くりょうさんを、強く抱きしめ直した。 「ごめん……な、さい……」 「りょうさんってば……」 「ひろ……は、僕、のこと、好き……じゃな、いで、しょ……? なの、に、ずっと、僕は……き、で……」 「え、」 最後の方は、嗚咽やら何やらで、どんな言葉を言ったのか分からなかった。 でも聞こえた。 俺がりょうさんのことを好きじゃないって? 「りょうさん」 俺は今まで一度も、りょうさんを好きじゃないって、思ったことはないよ……?

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