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もう一度(10)
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小さく呟かれる「好き」の言葉に、俺の都合の良い聞き間違いではないと確信した。
りょうさんは、まだ俺のことを想ってくれている。
俺と、同じ気持ちなんだ。
「りょうさん……」
小さい子どもをあやすかのように、何度もりょうさんの頭を撫でる。
「りょうさん。……俺のこと、まだ好きでいてくれるの?」
「う、ん……」
顔を覗き込んでそう確認すれば、きゅっと目を瞑って何度も頷いてくれた。
夢じゃないんだよね。
だって、目の前にりょうさんがいて、俺はあなたに触れてるもの。
温もりだって、ちゃんと感じてる。
……りょうさんを、もう一度俺のものにできるんだ。
嬉しい。また一緒にいられる。
りょうさんに、触れられる。
だからね。
もう謝らないで。別れようって言った、俺が悪いんだから。
「りょうさん、」
「ごめん、なさ、い……」
「りょうさん、もう謝らないで、」
「ごめ、ん、なさ……い」
「ううん。悪いのは俺だよ。ごめんね、りょうさん」
俺は小さな肩を震わせて泣くりょうさんを、強く抱きしめ直した。
「ごめん……な、さい……」
「りょうさんってば……」
「ひろ……は、僕、のこと、好き……じゃな、いで、しょ……? なの、に、ずっと、僕は……き、で……」
「え、」
最後の方は、嗚咽やら何やらで、どんな言葉を言ったのか分からなかった。
でも聞こえた。
俺がりょうさんのことを好きじゃないって?
「りょうさん」
俺は今まで一度も、りょうさんを好きじゃないって、思ったことはないよ……?
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