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幸せになろうよ(11)
「過去のことを、ずっと一人で抱え込んでたんだろ?」
だから、びっくりしたんだよ。
もっと自分勝手な奴だと思ってたのに、一人でずっと悩んでるから。拓也のいじめは小学生の時だった。拓也も少しずつ元気になって、今はわりとそれなりの高校生活を送っているのに。
高田君とだって、仲直りしていた。ひどいことをされたけれど、今思えば自分も彼を傷つけるようなことをしていたと、そんな話を本人に聞いたもの。
それなのに柚樹は、一人で離れたところに来て。誰にも頼らず、ここにいる。全てを未だに一人で抱え込んでるんだ。
いじめは、やってはいけないことだけれど。
柚樹はきっと、そうすることでしか自分を守れなかったんだろう。
だからって柚樹の行いが許されるわけじゃないけれど、悪いのは柚樹だけじゃない。
高田って奴も、拓也も、柚樹の親も。
みんなも、悪かったんだ。
柚樹はずっと苦しんでた。
それに気付けなかった、みんなだって悪いんだ。
「全てじゃないけど、俺はお前の過去を知ってる」
「……っ、ひぅ、」
「それでも、柚樹が好きなんだよ。同情とかそんなんじゃなくて」
「……うぅ、」
「もう一人で抱え込まないで。俺も一緒に背負わせて」
少しずつでいいから。
柚樹が自分のことを、好きになってくれればいい。
俺が柚樹を好きなように、自分を好きになって大切に思うようになってくれればいい。
そしていつか柚樹が自分を許せたら、その時は、一緒に謝りに行けばいい。過去の事実はどうしたって消せないけれど、それでも前に一歩、拓也と高田くんたちのように。
「ねぇ柚樹、もう一人じゃないよ」
俺が一人になんかしないから。
ずっと傍にいて、誰よりも大切にするから。
「だからさ、」
「……、ぅ、」
「一緒に進んで行こう」
「柚樹、好きだよ」
声にならない声で泣く柚樹にそっとキスをすると、回された手に少しだけ、力が込められたような気がした。
END
実はこれ、本編があって高田と篠原はくっつくんです。その番外編としてこの2人のお話を書いたのですが、本編はSD移動をミスしてまるまる消えてしまいました。泣
またいつか書きます……;///;
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