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幸せになろうよ(10)
三人の男の子が写っていた。
左には拓也。真ん中には、よく聞く「高田」のゼッケンを付けた男の子。右には、「町田」って男の子。そして、その子の頭の上の部分には、写真を破ろうとしたあとが残ってた。
それから、拓也の家に何回か来るうちに、拓也が少しだけ話してくれるようになったんだ。
「何でそうなったかなんて、はっきりとは分からなかったけど。拓也の話を聞いて、家庭の事情と高田くんが原因かなって、なんとなくそう思ってた」
柚樹の震えが大きくなる。
小さく、ごめんなさいと何度も呟く声が聞こえた。
ごめんね、柚樹。
もう少しだけ聞いて。
「高校入って同じクラスになって。お前の名前見た時は正直いい思いしなかった」
拓也をいじめた奴と同じ名前を見つけた時は、まさかって思った。でも教室に入って柚樹を見た時に、写真の子だって、すぐに分かったんだ。入学して少ししてから髪の毛染めたり、ピアス開けたりしたけどさ。そうするまでの柚樹は、笑っていなくても、あの写真の中で笑顔だった幼い「町田くん」と何の変わりもなかったから。
「悪い奴には、見えなかった」
いじめた本人に間違いないのに、第一印象は、とても悪い奴には見えなかった。
本格的に学校生活が始まってからも、友だちも作らずに、いつも一人でいて、苦しそうにしてた。見た目を変えて、周りと距離を取って。
一人は嫌なのに、何かそうしなくちゃいけないかのように、柚樹はいつも一人だった。
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