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幸せになろうよ(9)
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とんとんと、背中をリズムよく優しく叩くと、柚樹はゆっくり俺の背中に手を回した。
でも、ただ手を回しただけで、力は入ってない。遠慮なんかしなくていいのに。俺は柚樹の分まで、さらに力を込めた。
思ってたのと全然違う。
柚樹は、悪い奴じゃない。
「篠原拓也って覚えてる?」
「……っ、」
「俺の従兄弟なんだ」
俺のその言葉に、柚樹の体がだんだん強張る。
でも柚樹、逃げないで聞いて。
「柚樹の苛めって、けっこう酷かったじゃん? 拓也見てたら嫌でも分かるって感じで」
拓也と俺は同い年だから、学校も学年も同じだった。従兄弟は何人かいるけれど、その中でも一番仲良しなのは拓也だった。
拓也が転校して初めの頃は、よく電話をして新しい学校のことを聞いていた。拓也の口からは、「高田」って名前を何度も聞いていたし、話をしている時の口調からも、新しい学校でうまくやれてるんだとそう思ってた。
だけど、ある時から電話しても代わってもらえなくなった。体調が悪いが何回も続いて。心配になった俺が会いに行ったら、明るくてにこにこ笑う拓也じゃなくなってた。
いじめられてるんだって、見たらすぐにでも分かる。誰に何をされたのかと聞いても、拓也は何も言わなかったけれど、その日は拓也の家に泊まった時に、ある写真が目に入ったんだ。
運動会の時の写真。
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