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第24話※
「ちょ……と!」
苦情を申し立てようと声を張るが、素知らぬ顔で再びインナーを捲り上げた。
「舐めるからちゃんと見ててね」
「……っ、」
それだけ言うと宣言通り右の胸に舌を這わせる。同時に左の胸は指でこねくり回された。
まさかの事態に思わずびくりと肩が跳ねる。
最初は乳輪や側面をチロチロと舐めるだけで先端には触れない。濡れた側面に空気が当たるとヒヤリとする。
その冷気で思わず身体が震えた。
そのうち円を描く途中で気まぐれに先端にも触れる。
ロイさんが色白なので赤い舌がチロチロと覗く動き自体が艶かしい。恥ずかしくなって顔を背けると顎を掴んで戻された。
「だぁめ」
ちゃんと見てて、と告げるとこちらの反応を伺いながらしつこく胸に舌を這わせる。
相変わらず感じはしないのだが、何しろ視覚からの情報が扇情的だ。
顔を反らせても戻されるので仕方なく赤い舌を追いかけているとだんだん変な気になってくる。
それに気づいたロイさんはわざと音を立てるようにして舐め上げた。
ちゅっ、と音を立てながら乳輪にキスを落とす。
それが恥ずかしくて顔を背けると再び顎を掴んで戻される。今度は何も言わない。
その代わり下から見上げる様にしてアツシの顔を見ながらそっと先端にも触れた。クリクリとさすり付けるようにして舌先で弄ぶ。
揺れる髪の間から左目が覗く。
「……ァ、」
――ダメだ。
その目に見られるとどうして良いのか分からない。
勝手に息が上がるのを止めようとアツシは自身の手を噛んだ。それをじっくり見つめながらロイさんは尚もアツシを見上げる。
発情期 でもないのに身体が熱い。
ヒートの訳が分からなくなる熱さとは違う、じわじわと腹の底からやってくるそれにアツシは体を震わせた。
自身の変化についていけない。
――これはオメガだからなのか、それとも。
出せない答えに戸惑っているうちにロイさんは器用にも乳首に舌を這わせながらエプロンにまで手が伸びてくる。
それにハッとしてアツシは思考を中断した。
「ちょっと!」
「これ邪魔だから、脱いで」
「や……っ」
これ、の所でぐりっと股間を刺激されてビクンと体が跳ねた。さっきから容赦がない。
「もういいじゃないですか……っ、」
快感と羞恥が綯い交ぜになり、涙目でそう訴えるがロイさんはニコリと笑った。
「ダメ。まだ終わってないでしょ」
「でも、」
アツシが拒否しようとするとロイさんはずいっとこちらへ顔を近づけた。
「あんまり拒否ばっかされてると……食べたくなっちゃうなぁ」
言うや否や、ほんの少しフェロモンの圧を強める。
ズン、と身体に甘い痺れを伴う圧がかかる。まるで身体の中を電気が流れていくようだ。
「ひ……っ!」
急なことに思わず悲鳴をあげる。
すぐに霧散するような一瞬のものだったが、脅すのには十分な量だ。
「なんで、こんなことばっか……」
思わず熱い息を吐きながらもアツシがロイさんに疑問符を投げかける。
そもそもこの関係は一体何なんだろうか。
首輪を外してって、どういう意味なのか。
ロイさんの真意がアツシには分からなかった。
当の本人はというと、軽く考えるそぶりは見せたものの、そこに明確は答えを出すことをしない。
「んー、したいから?」
コテン、と首を傾げた。心底不思議そうな目をしている。
部下に手を出す理由としてはかなり最低な返事だが、ロイさんはこういう人だ。したい事は何が何でもするし、したくないことはテコでもしない。
ただ気が向いただけ。
気に入っていたアツシがたまたまオメガになったから気まぐれで手を出しているに過ぎない。
その返事にほんの少しだけ心が冷えた気がしたが、その理由には気づかなかった。
「それより、脱いでくれるの?くれないの?」
じわじわとフェロモンが濃くなる。それに比例するように肺が重たくなって息が出来ない。
アツシは苦しげに息を吐き出すと眉根を寄せた。
「わ、かりました……」
渋々了承を返すとロイさんは一度手を止めてじっとこちらを見つめる。その隙に仕方なくアツシはエプロンの紐に手を伸ばした。シュルリと音を立てて紐を解くと脱いだそれを軽く畳んで背もたれ部分へと掛ける。
「ズボンも緩めて」
「……っ、」
思わず躊躇するとまたフェロモンの圧が上がった。
――肺が熱い。
は……っ、と吐いた息は熱かった。
ヒートさせられてまた訳が分からなくなるのは怖い。
意を決して自らスラックスに手を伸ばす。
まさか自分から脱ぐことになろうとは。前を寛げると下着越しに撫でられた。
「ぁ……っ」
アツシのそこを撫で回しながらもロイさんは胸を食む。
胸は相変わらず感じないが、下の方はそうもいかない。じわじわと快感がやってきてもどかしい。
身をよじると胸を噛まれた。
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