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9 可愛くないから

可愛い扱いをしない片山のそばが居心地いいなあと意識し出したのは、学年が上がった頃。 片山は自慎吾と異なるタイプであっけらかんとした性格だ。 思ったことはすぐ口に出す、正義感の強い男で、お涙頂戴の映画では号泣する。笑う時はおおらかに。泣く時は豪快に。 何もかもさらけ出す片山に慎吾は惹かれていった。煙草を取り上げた片山も、痴漢から遠ざけてくれた片山も、一緒に笑った片山も、全部好きだと、慎吾は確信する。 「亮介ー!ノートありがとう!」 珍しく寮の部屋まで訪れて借りていたノートを亮介へ返す。亮介と長話するのも久々だ。部屋の前で二人が談笑していると後ろから片山が声をかけてきた。 「里山、悪りぃんだけど…」 申し訳なさそうに二人の会話に入り込む。 亮介は少し残念がったが、そのまま片山と部屋に戻る。 「何?どうしたの?」 「部屋で話したいことがあるんだ」 少しだけ怒気を含んだ声に、慎吾は何かしたっけ、と思いつつ片山を部屋に入れた。 烏龍茶をテーブルに置き、恐る恐る片山の顔を見る。 突然、片山が口を開く。 「なんでクラス違うあいつと仲いいの?」 「ああ、亮介?中学の時からの友達で…」 「あっちは友達と思ってないよ」 「…は…」 「お前、前に俺に言ったじゃん。可愛く見られるのは嫌だって。なのに何であいつには可愛子ぶってんの。あいつが好意持ってるの分かっててしてんの?」 片山が捲し立てて慎吾に詰め寄る。 「…分かってやってるよ。あいつ使えるから」 「お前、最低だそ、それ」 「うるさい!何の正義感だよ、僕の気持ちも分からないくせに!片山には関係ねぇだろっ!」 机を叩き、慎吾は怒鳴る。 「ほっとけよ!」 「ほっとけないよ。…慎吾が好きだから」 それを聞いて慎吾は大きく目を見開く。 「…お前も、僕を、可愛いとか、言うの…?」 亮介みたいに。 突然息が詰まる。うまく呼吸できない。 「慎吾!ゆっくり落ち着いて」 とっさに片山が慎吾の体を抱きしめて背中をさする。 気がつけば慎吾は泣いていた。 「慎吾、慎吾。聞いて。俺はお前を可愛いから好きなんて思ってないよ。一緒にいて面白いし、安心するし。でもさ、それだけなら別に友達でもいいと思うんだけど」 耳元で諭すように片山は続ける。 「他のやつに盗られたくないって思うし、気がついたら俺お前で抜いてたし」 「…は?」 「ゴメン!とにかく俺、お前が好きなんだ!」 ど直球の、片山らしい告白に涙も止まる。 何でもすぐ口に出してしまう片山がそんなことを思ってたなんて。不意に身体を離し、慎吾は片山の顔を見る。耳たぶまで真っ赤だ。 そんな片山の唇にキスをする。 「…!」 「可愛くないんだろ、僕。だったら付き合う」 「慎吾」 「僕も、好きだよ」 そのまま再度、唇を重ねた。 今度は深く。 「んっ…」 恐る恐る口の中に入ってきた舌に、自分の舌を絡ませて。片山が慎吾の身体を抱きしめる。 「可愛く、ないから。だから付き合って」 【慎吾&片山編 了】

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