10 / 31

1-2

腕時計が示す時刻は約束の時間から既に20分は過ぎていた。 俺の移動時間を含めずに考えたって、あいつから連絡が来たのは約束の時間から10分後の事だ。 時間も守れない上に約束の場所まで間違えるとはとんだ阿呆である。これは顔を合わせたら説教をしてやろう、今決めた。 兎にも角にも合流すべく早足で目的地を目指して歩いているとようやく遠くに裏門が見えてきた。 我が学園の正門に比べればやはり大きさや見てくれは劣りはするものの、裏門といえどその規格は通常の学校のものに比べればかなりの大きさだ。門の高さは身長の二倍はあるし外部からの侵入なんてものは許しはしない。 そうそんな甘い作りにはなっていないはずなのだ、我が学園のセキュリティは。 北条が先ほど電話口の向こうで言っていた妙な事を思い出して顔を顰める。 そう、確かもじゃもじゃが門の上にいるとか、なんとか。 意味がわからないがその言葉を無理に解くとすれば…書類通りの、身だしなみがホームレスレベルのあの転校生が門をよじ登っており、丁度乗り越えようとしたところで北条が居合わせた。といったところだろうか。 んな阿呆な。 正門の高さは8メートル近くはあるぞ。まず常識的に普通の人間は乗り越えようとは思わないし、物理的にも余程の猿人間でない限り不可能だろう。 やはり北条は勉強ができるだけで本質は馬鹿なのだろうか。本気で心配になったがまあいい、そんな事は。 それよりも、問題はこちらだ。 「あっっ!!お兄ちゃん!!こっちこっち!!」 「お兄ちゃん……って…」 門の向こう側、張り付くようにしている不審な男が一名。男は俺の姿を見つけると徐ろに声を張り上げた。 キラキラと輝く瞳と嬉しそうに俺を呼ぶその表情ときたら…ほんっとーに…こいつは…。 「滝真!久しぶりだね!」 「っ…はあ。17になってもこれか…」 「再会のぎゅーとちゅーは?ってかこの門開けて?」 「怖いわ。開けたくねーよ」 俺の返事も聞かずに早く早く、と急かす男の姿にもはや返す言葉もない。 本気で門を開けるか悩んだが北条にこっちは俺に任せろと言い切ってしまった手前見なかったことにして回れ右も出来ない。 それにさっさと行動しなければ理事長室へ案内する前に授業が始まってしまう。 そればっかしはこちらが迷惑を被ることになるので勘弁願いたい。という事で渋々と守衛のおじさんに声をかけて門を開けてもらうことにした。 低い地鳴りのような音を立てて門が開いていく。 その様子を遠巻きに眺めながら、そういえばどれくらいぶりだろうか。とふと疑問が浮かんだ。 「滝真っ!3年ぶり!」 その答えはすぐに彼が言ってくれるわけだが。 男は門が開くなり隙間を縫うようにこちらへ駆けてくると、飛びつくように抱きついてきた。 反射的にそれを受け止めようと腕を広げるが、思ったよりも大きい身体と衝撃に耐えられず体勢を崩して尻餅をついてしまった。 事故とはいえ俺に覆いかぶさるようにしている男にぎくりとする。 フワリと香る知らない匂いとあまり俺と変わらない体格。その顔は知っているはずなのに、まるで知らない男のように感じて、慌てて顔をそらした。 俺が知るこいつの姿はもっと小さくて、ひょろひょろとしていたのに。 3年という月日がまだ10代の俺たちにとって、どれほど長くそして一瞬の重要な時間なのかこの一瞬だけで痛いほどに感じた。 「3年…そうか、そんな経つのか」 「どう、俺。大きくなったでしょ、カッコよくなったよ」 「…ああ、びっくりした。デカくなったな、晴」 はる。昔呼んでいたようにそう呼ぶと、嬉しそうに笑う。 浅葱晴(あさぎ はる)、一つ離れた俺の実の弟だ。 .

ともだちにシェアしよう!