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「滝真はなんも変わらないね、安心する」
「お前も中身はなんも変わってないだろ」
「うん、……そうだね」
立ち上がる晴に手を差し伸ばされ、それを握って立ち上がった。
晴は俺の一つ下で、今年で高校二年生になる。
昔、まだ学園に入る前のこと。俺と晴は近所でも評判の仲の良い兄弟だった。
中学に上がると共に晴は地元の公立の小学校からここ、星渦学園の姉妹校である東葉学園の中等部に進学した。
初等部から星渦学園に通う俺は当然の如く、晴も時が来ればこの学園に通うと思っていた。
それだけに当時母からの電話で聞かされた、晴が東葉へ進学したという話の衝撃は今でも忘れない。
晴が東葉の中等部に入って、今年で5年が経つ。
年末年始や盆など学校の休みに家に帰れば容易く会うことも出来たがしかし、お互いの気分次第で帰らずに寮に留まる事もあるのでそれも確実ではない。
現に晴と会うのは三年ぶりだ。俺が星渦学園中等部を卒業した年の春、自宅でゆっくりしていると春休みを使って一時帰宅した晴が不機嫌そうな顔で一言おめでとうと残し、さっさと学園へ戻ってしまったきり。
あんなに俺に懐いて、どこにでも付いて回って、本当に可愛かったというのに全く。今では実家にも帰ってこない晴が、あの時わざわざ俺におめでとうを言いに家まで帰ってきたかと思うと、なんとも感慨深い。…というのが、もう三年も前の話になる。
「うーん、そんな昔の話もう覚えてないや。反抗期だったんでしょ、俺可愛いじゃん」
「ああ、確かにあれは可愛かったな。反抗期だけど祝いたいって気持ちがありありと伝わってきて…」
「ちょちょっと待って、もういいでしょそんな昔の話。ほらそんな事よりこの学校のこと教えてよっ、ねっ」
顔を赤くさせ、慌てて話を逸らす晴に思わず笑う。
昔は可愛いと褒めれば嬉しそうにしていたのに、いつの間に一丁前に照れるようになったのか。それにいつの間にか反抗期も終えたみたいだし。
隣を歩く弟はもうすぐ俺の背丈に追いつきそうだ。本当、一丁前になりやがって。
生意気。そう言って晴の明るい茶色に染められた頭を強く撫で付けた。
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