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常盤の元へ向かうべく来た道を戻っている途中、切っていた携帯の電源を入れると通知が来るわ来るわ。
もう止まらない不在着信とメッセージの通知の嵐に軽く目眩がした。
メッセージも確認せずにすぐ常盤に電話をかけ直すと、常盤はワンコールで出た。
その声は微かに震え、情けない声で俺の名前を叫ぶものだからつい呆れ混じりの笑いが漏れてしまった。
この声の感じだと多分つい先ほどまではまじで半泣きくらいはしていたな。
全く堪え性のない奴だと小さく息を吐き出して、常盤が現在の体育館にいる事を確認してからそのまま向かうことに決める。ここからならば大体15分ほど歩けば着くだろう。
『わ、笑わないでくださいよ……会長に電話は繋がらないし、北条先輩は手がいっぱいだからって全部任せてくるし、俺、本当にどうなっちゃうかと……』
「岩村はどうしたんだよ、あいつなら手空いてるだろ」
『連絡つかないです。今朝、一応生徒会室には来てたんですけどそれっきり。なんかニヤニヤしてたんで多分セフレのところじゃないですかね』
「ったく、あいつは……」
ただでさえ人手不足だというのに、全くこういう時くらいはサボらずにしっかりしてもらいたい。
仕方ない、俺からも連絡してみるがあまり当てにはしないで進めよう。
そう戸際に伝えれば弱々しい返事が返ってきて、つい呆れ混じりに嘆息する。こういうところが常盤のよくないところの一つなのだ。
「しっかりしろ、今現場をまとめられるのはお前だけだろ。自信を持て」
『は、はい』
「とりあえず…そうだな、他の委員会に………」
俺が体育館にたどり着くまでまだもう少しかかる。
今動いているのはいくつかの委員で、現場にいる唯一の生徒会の役員である常盤がそれらを全てまとめなければならない状況だ。
とりあえず最低限の動きだけ指示をして、後は現場の常盤に任せることにした。
頼んだぞ。電話口の向こうにいる常盤に念を押すようにそう伝える。
生徒会唯一の二年生である常盤に、俺は確かな信頼を置いている。常盤なら大丈夫だ。一瞬の間があいてから返ってきたしっかりとした返事に、俺はそっと顔を緩めた。
***
「会長!言われた通り関東の業者リストアップしました」
「よし、そうしたら式典用のカーペット、カーテンの取り扱いをしてるか、即日配送は出来ないかを確認していく。
取り扱いをしてる業者を更にリストアップ、即日配送どころか配送自体承っていない場合も備考欄にメモしてリストに突っ込んでおけ」
「はい!」
「おい、花の方はどうなってる?」
「こちらも業者に確認したところ在庫がもうないと…この時期は注文が殺到するのでどこも無理だろうと言われてしまいました…」
「っち、どうするか…。
………そういえば東葉の入学式は星渦とは被らなかったよな…。東葉学園に連絡を取れ、事情を話して貸してもらえないか聞いてこい」
「なぜ被らないことを知って…」
「姉妹校なんだから理事長はどちらも出席するだろ。日にちが被ってたら出席はできない。
最悪日にちが同じで午前と午後に分かれているだけの可能性もあるからその時はここにいる全員で手作りだ。
早く確認とってこい!」
「はっ、はい!」
「清掃の方は?!」
「今手が空いてるものでインクで汚れた箇所を拭いています!!
インクは順調に落ちて綺麗になっていますが、薬剤が切れそうなので先生に許可を取って何名かが買い出しに出ています!」
「よし、そっちは大丈夫そうだな。問題はこのくらいか、おい常盤はいるか」
「あっ、は、はい!なんでしょう、」
「一旦状況を整理したい。ここは他の奴に任せて行くぞ、ついてこい」
「はい、わかりました。
えっと、そこの…設営委員の方ですね。会長は少し席を外すので何かあったらすぐ生徒会役員に連絡して下さい。よろしくお願いします」
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