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「たりめーじゃん?超優秀風紀委員会だよ?誰がこの学園の風紀守ってんと思ってんのよ、あっもしかして喧嘩?喧嘩売ってる?ふはっ、さっすがかいちょー、風紀に喧嘩売るとか生徒会ってマジで超イケイケだねぇ」 ねえ影理ぃ?清原が瞳を細めながら口角を上げ楽しそうに笑う。 人の話を聞かずに繰り出される相変わらずの清原からの煽りに、絶対振り回されてたまるかと心を無にする。にやにやとこちらを伺う清原だったけれども、期待していた反応どころか全く動じない様子に機嫌を悪くしたらしい。先ほどまでの上機嫌は消し飛び、顔を顰めて大きく舌を打った。と、同時。廊下の影からもう一人、現れる。 「先輩、もう風紀室連れてっちゃっていっすか?」 きっと彼にとっては上級生だろうに。そんなのことお構いなしと言わんばかりに、男のネクタイをつかんで引っ張るその彼の姿に内心、げ。と思う。 引っ張られてきた男は確かに先ほど数学準備室から逃げ出した奴で、逃げ出し、捕まった後に一体何をさせられたのか、その顔は今や失意に染まっている。 隣にいた清原が瞬時に瞳を輝かせ、浮き足立つ足取りでその男の元へ駆け寄って行った。 …大変嫌な予感がする。 逃げた男は捕まったようだし、ここはさっさと退散するべきかと一歩、二歩後ろへ後退りした、その時だった。 「うっはー!空くん!俺としたことが君のことすっかり忘れてた!こっち来てこっち!」 「ちょ、なんすか先輩…服引っ張んないでください…よ……」 清原に引っ張られこちらに押し出される、非常に迷惑そうな表情をした男と不意に視線が合った。 清原を相手にしても常にローテンションを保っていた彼の眉間には次第に深いシワが刻まれて行き、心なしか瞳孔まで開いて来た気がする。ああ、もう、ほら。この先絶対面倒臭い。 ていうか逃げないようにネクタイを掴んだ手にも力が篭っているせいで、逃げ出した男は大変苦しそうな様子だけれど、いいのか死ぬぞそいつ。 そんな事なんてどうでもいい超面白ぇといった様子の清原と、興味も関心もなくただこちらを眺める加賀谷。そしてまるで敵を前にした犬のように唸り声を上げ威嚇してくる男に、いつものことだけれど、この場にいるんだったら誰でもいいからちゃんとこの犬の手綱引けよなと心底ため息を吐きたくなる。ほんと、いつものことなんだけどな。 「そーらーくーん、会長がそいつ逃したんだよ?そのくせ風紀に文句言ってきてんの超許せなくなーい?」 「待て。待て待て、語弊にも程があるだろ。ていうかまずネクタイ離してやれ、そいつ顔色悪くなってるぞ」 「わー会長余裕だねぇ、空くん馬鹿にされてるよ!いいの?ギャフンと言わせちゃえよ!」 「いいからお前は黙ってろ!」 至極楽しそうに茶々を入れてくる清原にいい加減黙れと言い除けると、清原は待ってましたと言わんばかりに瞳を細めて舌を出した。そしてそのまま笑みを深くするとさっきまでの騒々しさは何処へ、静かに加賀谷の隣へ戻っていく。 その姿に、ああ清原の誘いに乗ったらダメだと分かっていたはずなのに。しまったと思う。そんな俺の後悔と清原の目論見を知ってか知らずか、まるで犬のように唸り声を上げ猫のように逆毛を立てる男はついに、とうとうブチ切れた。 「浅葱滝真…てめぇ気緩んでんじゃねぇのか…?目の前でレイプ犯逃しといてよく俺たちの前にのこのこ顔出せたな、ああ?!」 犬…いいや、もはやチンピラにしか見えないこの男は植木空(うえき そら)という。 風紀委員の二年生で幹部も務めている植木は実質No.3と言えよう。そして何と言っても一番の特徴は、生徒会…ではなく、会長である俺をまるで親の仇のように憎み嫌ってくる点だろうか。 植木が俺を嫌っているということは、生徒会や風紀面子だけでなく一般生徒にまで知られているがその理由を知る者はごく少数である。もちろんの事、俺自身なぜ自分がこんなにも嫌われているかは知らない。初めて会った時からずっとこんな調子なのだ。 ちなみに今回はまともな理由をつけて絡んできたが特にネタがない時は顔合わせただけでも「よくもまあ俺たちの前に顔出せたな、ああ?!」とチンピラのように突っかかってくるもんだから厄介なのである。

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