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いくら俺が殆 ど知られていない生徒会長だとは言っても、クラスメートだけは俺が会長だと言うことを知っている。
「おい、羽柴」
「……んあ?」
「お前、大丈夫か?」
「ああ。ありがとう」
唯一、心配して俺に声をかけてくれるのが隣の席の槙村で、俺は慌てて身を起こした。結局、学校は休まなかったから、槙村は俺が倒れたことを知らないはずだ。それでもそう声をかけてくれると言うことは、もしかして俺が無理をしているように見えるのかも知れない。
授業だけはきちん受けとかないと勉強する時間がないのに、最近、授業中に居眠りすることが増えてしまった。机に突っ伏した状態から身を起こすと、
「……ぷっ」
槙村に笑われた。
「ついてる」
「へ?」
「口の横に手とよだれの痕」
「うそ、マジ?」
慌ててよだれを拭いながら立ち上がる。
「槙村、ごめん」
「さっきの授業のノートだろ、ほれ」
「悪い。恩に着るな」
槙村は多くを語らなくてもわかってくれる数少ないやつだ。俺が会長なんてやってなかったら、間違いなく堂々と友達と呼べただろう。
二年生になってからこちら、休み時間にゆっくり誰かと話をするような暇がなかった。生徒会の仕事に追われ、休み時間も殆ど生徒会室か教室で机に向かっているんだから、友達と呼べる存在が出来るはずがない。
それ以前に、こう見えて俺は人見知りだし。
槙村はクラスの中心的な人物で、明朗活発を絵に描いたようなやつで友達も多い。見た目は爽やかなイケメンタイプで抱かれたいランキングでは惜しくも10位入賞を逃したが、堂々の12位と健闘している。
軽く毛先を遊ばせた髪型は好感度が高く、人好きのする笑顔には裏がない。性格も至って穏やかで、王子様とまではいかないが、生徒会役員に当て嵌めると副会長タイプと言えるだろう。
槙村にノートを借り、それを書き写しながら内容を頭に叩き込む。休み時間に予習復習をしとくのが俺の唯一の自主勉強だったが、居眠りをするようになって勉強量が目に見えて減ってしまった。
授業中に、授業内容を覚えることが出来ないのはかなりの痛手だ。なんとか目が冴える方法はないかと検索してみたら、危険ドラッグや覚醒剤のページが真っ先に目についた。
「……マジか」
一回倒れてから体調も回復したと思っていたが、もしかして、この状態は自分が思っている以上に切羽詰まったものなのかも知れない。これは早急に皆に戻って来て貰わないと、取り返しがつかなくなるかもな。
「日向、悪い。ちょっといい?」
ボイコットが始まってから初めて唯一、同じクラスの会計の日向に声をかけた。いつも俺のことをスルーしている日向だったが、驚きからか大きく目を見開いている。
何よりクラスメートの目が一身に注がれたが、俺は気にせず日向を休み時間の廊下に連れ出した。
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