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08
「……なんの用?」
日向は一言で言ってしまえば所謂チャラ男キャラで、嫌われていることを抜きにしても出来れば近付きたくない人間だ。いつも間延びした気の抜けた口調で話すくせに、俺に向ける言葉は当然だけど酷く冷たいもので。
「仕事、手伝って貰おうと思って」
「はぁ?! なんで俺が……」
お前が会計だからだよと言ってやりたい言葉を飲み込んで、
「これに目を通してくれるだけでいいから」
そう言って、日向に今朝仕上がったばかりの資料のコピーを手渡した。
「……これってさ。俺の仕事?」
「え?」
「会計の」
「いや。会計の仕事ってか、どっちかと言うと皆でする仕事かな。新歓の構成案だから、出来れば他のメンバーにも回して意見を聞かせて欲しい。駄目出しでいいから」
「……」
黙っていても目立つ日向と俺を行き交う生徒がちら見して来る。会話の内容までは聞かれないだろうけど、長時間ここにいるのはまずい。
「あのさ、ごめんな」
「……は?」
「生徒会から追い出して。お前、せっかく全校生徒から役員に選ばれたのに」
「……っっ」
取りあえず、ずっと気になっていたことを口にした。俺が会長になったことや、皆をそれぞれの役職に振り分けたことに関しては謝れないが、結果的に追い出すような形になったのは確かだ。
「それだけ」
「待てよ!」
そう言って生徒会室に向かおうとした腕を引かれ、俺は日向を振り返った。
「……もう大丈夫なのかよ」
「へ? なにが?」
「体調」
どうやら倒れたことを心配してくれていたようで、その一言にホッとした。
「もうすっかり。ぴんぴんしてるよ。ありがとな」
日向の肩を軽くぽんと叩き、今度こそ生徒会室へと向かう。日向の視線を背中越しに感じたが、今度は立ち止まらずに前に進んだ。
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