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 買い物の成果は上々で、結局、俺は3パターンもの勝負服コーデ一式を買ってしまった。思ったよりテンションが上がってたんだろうな。  今の俺は本屋か手芸店に行くぐらいしか外出しないから、こんなに持ってても宝の持ち腐れなのに。 「ま、いっか」  いざとなったらまたテディベアにすればいいし、そうなったらものすごくお洒落なものが出来そうだ。それにこれ以上は身長が伸びすぎて着られなくなるなんてこともないだろうし、普通に持ってても支障はないかと思い直す。  寮に戻って廊下を歩いていたら、何人かの寮生と擦れ違った。その全員がわざわざ俺を振り返って二度見して来たけど、今までの俺はそんだけ酷い見た目をしてたんだろうな。  思い返すと髪なんか殆どとかしもしなかったし、寝癖を直す暇もなかった。洗顔と歯磨きだけはしっかりしたけど、お洒落に気遣う暇もなかったんだよな。  こう見えて俺も一応は思春期真っ盛りの男子の端くれだし、それなりにお洒落をしたい気はあった。ただ、時間がなかった。  お洒落をしたいと言っても日向のようにピアスなんかのアクセサリーをじゃらじゃら付けたいわけじゃなくて、なんて言うかこう、せめて雰囲気イケメンに見えるぐらいにはしゃんとしてたいって言うかさ。 「槙村、バスタオルここに置いとく……」 『……んっ、はあっ』  槙村が入浴中の脱衣所にタオルを持って行ってやったら、風呂場から何やらなまめかしい吐息が聞こえて来た。 「……!?」  ちょ、槙村のやつ、マジか!  つか、自分の部屋でやってくれ。  見てはいけないものを見てしまったような状況に軽くパニックになりながら、慌てて自室に戻る。今年度になってからは一人部屋だったし、去年のルームメイトはオタクな引きこもりで、殆ど顔を合わせることもなかった。  中等部の時には勿論こんなことはなかったし、初めての経験に少なからず動揺している。 『――……っっ』  槙村のやつ、誰かの名前を呼んでたな。やっぱあれかな。彼女の彩夏さんに会った直後だし、彩夏さんの名前を呼びながらやってたんだろうか。 「……嘘だろ」  久しぶりに、起きてる時に勃起してしまった。槙村の現場を目撃してとか超ダサいけど、今年になってからは夢精か朝勃ちしかしなかったのに。こんな時、俺はおかずに困ってしまう。アダルトビデオの類には興味もないし、そもそもそれ御用達のエッチな雑誌や動画も見ない。  俺のスタイルはただひたすら妄想するだけと言う超シンプルなものなんだけど、あろうことか槙村がシャワーの下であそこを握ってるところを想像してしまった。 「…………」  ありがとう、我が友、槙村よ。  槙村のお陰(?)で見る見るうちに興奮が治まって行く。 「……ふう」  些か不完全燃焼な気がしないでもないが、萎えたものをズボンに仕舞い、俺は枕に顔を埋めた。そういや、今年に入ってからまともにしてないな。そもそも、そんなことしてる暇もなかったし。  その夜、久しぶりに行為に及ぶも事ごとく槙村に邪魔された俺がそのままふて寝したのは言うまでもない。

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