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04
翌日は新入生の中から次期会長候補の選出日で、
「鷹司君、お願い出来るかな?」
「はい。喜んで!」
俺は鷹司の弟の葵 君を会長補佐に任命した。葵君は兄の鷹司と言うよりは肇先輩タイプの優等生で、本来の意味で生徒会長に打ってつけの逸材だ。
俺様でカリスマ性に溢れる鷹司とは違い、誠実さと慈愛に満ちている。言ってみればとにかく真面目なんだけど底抜けに明るくて、葵君と言えばいつも笑っているイメージしかなかったり。
橘兄弟と同じ年子の二人はよく見ればよく似ているが、兄の鷹司が滅多に笑わないからか正反対に見えた。
葵君の身長は鷹司より少し低いが、俺と同じくらいあって。兄の鷹司とは違って洗いざらしを自然にスタイリングしたであろう髪型はナチュラルで、好感度も高い。
葵君は一年生の抱かれたいランキングの二位で、抱きたいランキングでも二位とカリスマ性もある。鷹司が月だとすれば葵君は太陽のような子で、生徒会のムードメーカーにもなってくれるだろう。
あともう一人。今年は会長候補の葵君の他に、副会長候補の隼人 君も補佐役に選んだ。副会長補佐の隼人君のお父さんはイギリス大使で、彼は本名をスチュワート隼人というハーフの生徒だ。
見た目は完全にイギリス人で、白に限りなく近いプラチナブロンズの髪と青い瞳の持ち主であり、本物の王子様のようだとのもっぱらの噂だ。
身長は鷹司より少し高いくらいで、キャラ的には椿野に近いかも知れない。抱かれたいランキングの断トツ一位が彼で、椿野は隼人君から本格的な紅茶の淹れ方を教わったらしかった。
「よろしくねー」
「ふふっ、また賑やかになるなあ」
「葵、隼人、よろしくな! 俺は会計の佐倉鈴音だ! 役職名じゃなく名前で呼んでくれよな!」
なんと言うか、また生徒会が華やかになった。俺の時とは違い、二人が生徒会役員になったことは直ぐに学校中に広まるだろう。
次期生徒会は会長の葵君と副会長の隼人君に任せておけば安泰で、安心して引退出来る。
今年は閏年で、役員の任期も例年よりも一日多い。
いつもの年より一日多い366日。
まだ生徒会長になって40日程しか経ってはいないが、たった一人で仕事をしていた時のことを思うとしっかり生徒会長を勤め上げようと心から思ったのだった。
これで今年度の生徒会役員は全て揃った。何らかのトラブルから守るために途中から補佐役に就く例外があるが、これが完全体制だ。
会長が俺、羽柴翼で、補佐に鷹司葵。副会長が椿野浅葱で、補佐にスチュワート隼人。書記には鷹司要、会計が日向時雨と佐倉鈴音の二人。庶務も二人で、日下部剣士朗と不知火遥。
俺以外のメンバーは揃いに揃ってイケメンで、抱きたい&抱かれたいランキングの上位者だ。そんなメンバーを統率出来るのかと不安になるが、リコールと解任を経て、皆が進んで協力してくれるようになった今。いつかは全部、笑い話になるんだろう。
「羽柴先輩、よかったら紅茶淹れましょうか?」
「ああ、ありが……」
「ちょっとちょっと、葵君。僕の楽しみを奪わないでくれる?」
「えっ、あっ。決してそんなつもりは……」
「あー、椿野が葵っちいじめてるー」
「浅葱、後輩虐めはいけないんだぞ! それと葵。後輩だからって別にお茶くみなんかしなくていいんだからな!」
「……お茶くみ」
「あははっ。じゃあ、葵君はいつも僕らにお茶くみしてくれるOLみたいなもんだったんだ」
「……ぷふっ。はっ、ご、ごめんなさい!」
「…………」
それにしても。ちょっと賑やかすぎないか?
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