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6月を間近に控え、奄美、沖縄地方に続き、九州、四国地方も相次いで梅雨入りした。今年は全国的に例年より梅雨入りが早く、予想では梅雨明けも例年より早まる可能性があるらしい。
「あちー」
と言うことは今年の夏も例年よりも早く来るということで、このところ、日中は連日の夏日が続いている。早朝はまだまだ20℃を切る日もあるが、着実に夏は近付いていた。
いや、季節的にはもう初夏だ。暦の上では、6月から8月までが夏だし。
柴咲学園は6月を前に一足先に更衣を終えていて、カッターシャツこそ長袖ではあるが、ブレザーやカーディガンを着ている生徒は見当たらない。
「あちーねー」
長袖にベストの生徒もベストを脱ぎ始める頃で、ただ、空調が効いている室内では一年を通して半袖の生徒は殆どいないのが柴咲学園だ。
「あ! 日向様だ!」
「わ! 会長様もご一緒だぁ」
柴咲学園の校舎と学生寮は空調がばっちり効いていて、実は真冬でも室内ではブレザーやカーディガンがいらないほどで、ただ、移動で室外を歩く時に寒いから、皆、ブレザーやカーディガンを着込んでいる。
夏も同じで、室内にいると半袖だと少し肌寒いぐらいで、だから真夏でも長袖の生徒が殆どで、他校に比べて更衣の時期は各々でまちまちだ。
「日向様、会長様。お疲れ様です!」
俺はまだ名前を覚えて貰えていないのか、苗字じゃなくて役職名で呼ばれることが気になるようになってしまった。
「ねえねえ、羽柴っち。球技大会、どの球技にする?」
「んー、そうだなあ……」
実力テストも無事終わり、来週末には校内球技大会が控えている。球技大会は体育委員会主催の行事で、生徒会も一応協力はするが、今回は特に生徒会が準備することはない。
うちの学校の球技大会はサッカー、卓球、バスケ、バレーの四種目で、学年別のS組とA組、B組とC組、D組とE組との合同チームで争うことになっている。
表向きは主にスポーツ特待生が在籍するF組は、一部の生徒は審判や運営サポートに回り、残りは他のクラスのチームに助っ人として出向くことになっていた。ちなみにF組は他のクラスより偏差値が低くて、一応進学校のうちの中でも普通一般の成績と出席日数で進級出来るらしい。
何しろうちはお坊ちゃま校だけに、球技がNGな生徒が多い。突き指等の怪我で楽器が弾けなくなったり筆が持てなくなるのを回避するためで、そんな生徒はこぞってサッカーを選択するだろう。
そうなると芸術クラスであるE組、D組の大半はサッカーを選択することになるが、うちの芸術クラスとスポーツクラスは専門学科じゃなくてクラス分けの区分に過ぎないから、深く考えるまでもないんだけどね。芸術は美術と音楽、書道の三教科から各々が選択科目を選ぶんだけど、芸術クラスは芸術の時間が他より少し多く、スポーツのF組は体育の時間が他のクラスより少し多いんだそうだ。
「ねえねえ、球技大会のチーム分けはS組とA組合同なんだよね?」
「ああ。そうなるな」
「そうなると鷹司たちと一緒じゃん」
生徒会のメンバー全員、同じチームだよねえと笑う日向は、生徒会室に入ると直ぐに、皆になんの球技を選択するのか聞いて回っていた。
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