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 球技大会と言っても好きな球技をやれるわけではなく、まずは手や指を怪我出来ない生徒から出場する球技が決まって行く。  芸術クラスじゃないS組とA組にもピアノやバイオリンを習っている生徒は結構いて、特にS組の華奢で小柄な生徒はこれに当て嵌まる確率が高い。 「なんで僕が卓球なんか……」  その結果、バスケやバレー以外を希望していた日下部は卓球に決まったらしい。それと言うのも手を使わないサッカーに手を怪我出来ない生徒が集中したからで、日下部はしきりに悔しがっていた。 「卓球もカッコイイ」 「じゃあ、(よう)がやればぁ?」  幼なじみの気安さからか、日下部は不知火からのそんなフォローにぷりぷりと頬を膨らませながら厭味を言っている。おそらくはオリンピックメダリストの某イケメン選手のことを持ち出してフォローしたであろう不知火は、そんな日下部の一言に毎度のことながらオロオロしていて。  因みに190センチ近い長身の不知火はバスケに出場することに決まったようで、そのことでも日下部はご機嫌ななめなようだ。だけどすぐにいつもの日下部に戻るのが分かっているから、誰も気にしていない。  茶道の稽古やらで怪我出来ない椿野はサッカーに決まり、鷹司と俺はバレーに決まった。因みに橘もバレー、御子柴は卓球で、肇先輩と槙村はバスケに決まったらしかった。  サッカーはそう言ったわけでスポーツが苦手な生徒が大半だが、スポーツ推薦の外部生や勉強が苦手でスポーツが得意な(不良とも言う)エスカレーター組の生徒で形成されているF組がサポートメンバーとして出場することになっている。S組とA組に限って言えば特にエリート揃いのS組には文武両道の生徒が結構いて、例えば椿野や佐倉なんかがそうだ。  特に佐倉は不良チームの仲間とフットサルチームを組んでいて、S組とA組の合同チームの目玉選手になるだろう。一見して運動なんかしなさそうに見える椿野も、どんな競技もそつなく熟してしまうくらい運動神経がいいんだよな。  一年生メンバーの葵君と隼人君もバレーに出場するらしく、球技大会は学年も関係なくチーム対抗になるから、一年のS組とA組の合同チームは強敵になるかも知れない。 「羽柴っち、がんばろうね」  応援に行くからと笑う日向はバスケに出場することに決まっていて、勉強は苦手だけど運動神経抜群の日向はバスケの目玉選手だ。  球技大会はサポートに回る生徒会の仕事はそれほどなく、俺達は早々に今日の仕事を切り上げて、それぞれの球技の練習をするための練習場所へと向かったのだった。

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