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09 絢人side (元同室者)
「すげ……」
思わず感嘆の声が漏れる。俺が出場するバスケの練習が思ったより早く終わったから、羽柴達が出場するバレーの見学に来たんだけど。
バスケの練習場になっている第二体育館にも報道部のテレビカメラは入っていたが、抱かれたいランキングのツートップと羽柴が出場するバレーの練習場の第三体育館は物凄いことになっていた。
報道部員の他に新聞部員もいるし、ギャラリーの数も半端ない。鷹司や橘がアタックを決める度に割れるような歓声が上がるし、羽柴がトスを上げるだけでも歓声が上がっていた。
「つか、外すなっつってんのに……」
おまけに普段の体育の授業は眼鏡で受けている羽柴が、球技大会だからか眼鏡を外してコンタクトにしている。体育館に移動する前は眼鏡を掛けていたから、おそらくは練習に入る前にコンタクトを装着したんだろう。
そのせいで、隠れ美形の羽柴の美形が隠れていない。それもあってか、いつもは鷹司と橘で二分(にぶん)される歓声が、羽柴と二人で三分(さんぶん)されたと言っても過言じゃないような状態になっていた。
「キャー、会長さまぁ!」
顔はともかく、まだ名前を覚えていない生徒も多いようで羽柴は役職名で呼ばれることが多かった。ほとばしる汗をもろともせず、バレーに打ち込む姿はスポ根ドラマ……じゃないな。まるで青春ドラマを見ているようだ。
「キャー!」
羽柴のフェイントでツーアタックが決まり、一際大きな歓声が上がった。普段の体育の時間は目立たない羽柴。
さほど体育が得意なようじゃないのに、どうやらバレーは例外のようで立派にセッターを勤めている。
「あれ、誰?」
その時、隣からそんな間抜けな声がした。
「あー、日向は初めてか? 羽柴が眼鏡外してるの見るの」
「うそっ、超カッコイイじゃん!」
「……羽柴イケメン」
「え、あれ羽柴なの!?」
次いで、一緒に見学に来た生徒会の面々からそんな声が上がる。
球技大会の練習だけでこの騒ぎか。
本番はどうなることかと思わず心配してしまう。
「羽柴もだけど、なんたって同じチームに鷹司と橘がいるからなあ」
そう独りごちた俺の声は、ギャラリーの歓声に掻き消されたのだった。
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