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6月に入り、とうとう校内球技大会当日がやって来た。
「絶対優勝するぞ、おー!」
一人でお決まりの掛け合いをしている日向は朝から気合いマックスで、無駄にテンションが高い。
「僕だって負けないんだから!」
なんやかんやで日下部も卓球にハマってしまったらしく、卓球のマイラケットを購入していた。おまけにお揃いのユニフォームまで作ってしまったようで、ゼッケンを付けてユニフォームが隠れることをしきりに気にしている。
日下部の後ろで、日下部とダブルスを組むことになった御子柴がアメリカ人が『やれやれ』と口にしながら呆れる時のオーバーアクションをしていて、俺は思わず笑ってしまった。
全国的に梅雨入りした初めての週末。梅雨入りしてから連日のように雨の日が続いている。
「それじゃ。試合が終わったら応援に行くよ」
互いに健闘を称え合いながらそれぞれの試合会場へ。
「あ、兄さん」
「羽柴先輩。橘先輩も」
体育館の入口付近で俺達と同じバレーボールに出場する葵君と隼人君に鉢合わせして、彼らも一緒に会場に向かうことにした。
「きゃー! 生徒会の皆様よ!」
俺達が体育館に入った途端、待ち兼ねたように黄色い歓声が上がる。心なしかまるでオネエ言葉のような言い回しだったが、うちの学校でチワワと呼ばれている可愛い系の生徒が興奮のあまり、そんな風に口走ってしまったんだろう。
なんせ、生徒会役員と風紀委員長が横一例になって会場に向かっている。しかも、なにげにレアなジャージ姿で。
俺も気合いを入れるため、体育館横のトイレで眼鏡を外してコンタクトに変えた。普段は体育の時間も眼鏡で受けてはいるが、激しい運動だと眼鏡が邪魔になるのだ。
「これでよし」
これで思い切りプレイが出来る。自分ではこれが最良の状態なんだけど、何故だか皆、俺に眼鏡を掛けさせたがる。
正確には裸眼ではないが、眼鏡がない状態は思ったより快適だったりするんだけど、会長らしく見えるらしい新しい眼鏡を掛けている方が仲間内には好評だ。
「きゃー、会長様よ!」
ただ、一部のオネエ……、じゃなかった。チワワな生徒に眼鏡無しの状態は好評なようで、眼鏡を掛けている時より歓声が多い気がする。
「羽柴! 始まるぞ」
体育館に入るとすぐに簡単な開会式があり、開会式が終わって直ぐの一回戦で隼人君達の1Aと1Sの合同クラスと当たってしまった。
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